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VC IG、MA IGの最終案公開
今年8月「Materiality Assessment Implementation Guidance:MA IG」と「Value Chain Implementation Guidance(VC IG)」のドラフトが、EFRAGからSustainability Reporting Technical Expert Group(SR TEG)とSustainability Reporting Board(EFRAG SRB)に提案されていました。
このときは、5回に亘ってnoteでご案内しました。
その後、数回の会合で議論が交わされ、10月17日の会合で最終案が示されました。
![](https://assets.st-note.com/img/1697953264347-boNqXbGIvb.png?width=800)
今後、11月6日にTEG、11月15日にSRBでの承認を経て、4週間のコンサルテーション、最終版が発効される予定となっています。
気になるのは、TEG及びSRBからのフィードバックを受けて、どのような変更がなされたかですよね。段階は異なりますが、EFRAGが欧州委員会へ提出したESRS草案と、委員会での審議を経て示された最終案の相違について、賛否両論があったことは記憶に新しいところ。
それぞれSummaryを比較してみただけではありますが、方向性は見えてきたように思います。いずれにせよ「Materiality」の特定、判断において補完関係にあることは明確です。
「VC IG」で目についたのは2点。
1点目は、Value chainの説明が集約されたこと。
上流から下流まで含まれ、かつ「直接的な契約関係に限定されない」、つまりTier1だけでなくTier2、3なども含まれることが、より明確になりました。
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2点目は、開示する内容について具体的かつ義務的になったこと。
「開示する内容には含まれる」といった曖昧な表現から、「開示すること」「開示内容は含むこと」に変更されています。
![](https://assets.st-note.com/img/1697955729671-pYz9g5xSVn.png?width=800)
法律用語に詳しい方であれば「shall」と「should」「may」には敏感かと思いますが、ここで敢えて「shall」を使った意味を考えてしまいますね。
続いて「MA IG」です。
気になったのは2点。
1点目は、「VC IG」と同様で、Value chainの明確化です。
「its own operation」なんて当たり前すぎますが、個社単位ではなく、グループ企業まで含むといったことを明示したかったのでしょうか。
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「Materiality」判断を明確にする記述も追加。「Criteria」を設定し、曖昧さを避けることを求めています。第三者検証における「Clarification:明確化要求」のようなものですね。
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2点目は、「do not mandate」という表現を使った記述。
「shall」を敢えて使わないでいながら、暗に「義務」をほのめかしているように思えました。特徴的なのは、次の2つ。
1つ目は、評価プロセスについて。
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ESRSは、マテリアリティ評価を行う際に従うべき特定のプロセスや一連のステップを義務付けていない。これは、事業者の判断に委ねられており、事業者は自社の事実と状況をよりよく反映するプロセスを定義しなければならないからである
ステークホルダーに対して説明責任を果たすのは「報告企業」であり、「何故開示していないのか」という質問があった場合、当局は関与しませんよ、ということ。
これは、EFRAGから提出されたESRSが欧州委員会の審議によって、結局ほぼ全ての開示要求事項が「Materiality」の判断基準対象となったことによる批判に対する、欧州委員会の回答なのではないでしょうか。
2つ目は、エンゲージメントについて。
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ESRSは、ステークホルダー・エンゲージメントに関する具体的な行動を義務付けておらず、現在EUの立法プロセスで定義されているCSDDDの内容を先取りするものではない。
こちらも、CSDDDを先取りしろと言わんばかりに感じるのは、私だけでしょうか?
ちなみに、CSDDDは「Corporate Sustainability Due Diligence Directive」の略称で、EUに拠点を持つまたはEUで事業を展開する企業に対し、事業活動から生じる人権および環境に対する悪影響を識別、評価、予防、および軽減する義務を課すことを目的として欧州委員会によって正式に提案され、審議中です。
ということで、MA IG及びVC IGの最終版について見てきました。
Value chainにおける開示範囲は、Materialityで特定する必要があり、特定するためには、Materiality Assessmentをする必要があります。
Materialityの判断は、ISSBのIFRS S1・S2でも必要です。
それはすなわち、SSBJが策定する日本版S1・S2でも同様。
「Comply/Disclose or explain」
企業の自主性に任されることが基本になる中、早い段階から「Criteria」を策定して、対応し始めておきたいですね。
![](https://assets.st-note.com/img/1697959885486-4ekN0SUgl8.png?width=800)
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