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ESRS導入ガイダンスのドラフト公開(4)

EFRAGが作成中の、ESRS導入ガイダンス。
8/23の会合でドラフトが公開されたのを受け、紹介しております。

「Value Chain Implementation Guidance(VC IG)」と「Materiality Assessment Implementation Guidance(MA IG)」の2種類があり、前回からMA IGの方をご案内しています。

3回目では、MAにおける重要な概念、「Impact materiality」と「Financial materiality」までご案内しました。

今回は、「Assessment(評価)」について説明していきたいと思います。
ステップとしては、3つあります。

重要性評価プロセスの例

A.自社の事業活動、ビジネスモデル、ビジネス関係、バリューチェーンの分析
B.現在及び潜在的な事業継続可能性に関わる影響、リスク、 機会の特定
C.現在及び潜在的な影響の重要性を評価

A.では、自社の事業活動の影響が及ぶ範囲を拡大して(トピックレベル〜サブトピックレベル〜サブーサブトピックレベル)、持続可能性に影響を与える要素、条件を把握していきます。

持続可能性に関する事項、トピック、サブトピック、影響、リスク、機会

ガイダンスでは、上図のように、従業員から、労働環境、さらに労働環境がもたらす従業員の健康面へと拡げる例を挙げています。

また、バリューチェーンへの拡大では、前回ご案内したように、上流や下流において、直接あるいは間接的に影響を及ぼす場合、などを考慮して範囲を推定することなどが想定されます。

B.では、A.で把握した範囲における「リスク・機会」を特定するのですが、ESRS 1 AR(Application Requirements)16に、ESRSがカバーする持続可能性に関する事項を要約したリストがありますので、これに自社の状況をマッピングさせながら行うのが分かりやすいと思います。

ESRS 1 AR16

ただ、このリストの使用に当たっては、下記のような断り書きがあることに、留意しましょう。

リストの使用は、持続可能性事項を特定するための良い出発点であるが、 マテリアリティアセスメントに代わるチェックリストアプローチとして適用されるべきではない。

ESRS 1 AR16

つまり、このリストは、重要事項を決定するプロセスの代用にすることはできず、あくまでも事業者の重要性評価を支援するためのツールであるということ。なので、最終的に重要事項を決定する際には、自社固有の状況を考慮する必要があることを認識して、有難く使わせてもらいましょう。

なお、特定方法については、「トップダウン」あるいは「ボトムアップ」アプローチがあると説明されています。

トップダウンアプローチ
トピック/サブトピック/サブサ ブトピックレベルで、潜在的な持続可能性の重要事項のリストを特定し 、関連する潜在的な重要影響(実際/潜在的、ネガティブまたはポジティブ)、 リスクまたは機会の存在を評価するものである。

ボトムアップアプローチ
きめ細かなレベルで特定された影 響、リスク、機会に基づいて、潜在的な重要事項のリストを特定することである。事業者は、これらの影響、リスク、機会をトピックまたはサブトピックにグループ化し、ESRS第1版AR16項で定義された分類と比較する潜在的重要事項のリストとすることができる。

ですが、バリュチェーン全体に亘って、ESRSがカバーする持続可能性に関する事項を網羅的に特定することが目的なので、こだわる必要はありません。

特定された事項を、次ステップにおいて、その重要性を評価し、開示するか否かを判断することになるので、抜け漏れなくピックアップすることに注力しましょう。

さて、重要性評価プロセスのA及びBまで説明してきました。
最後は重要性の評価です。

ESRS 1 パラグラフ42には、事業者は適切な定量的・定性的閾値を用い、ESRS 1 3.4章に定められた基準を適用しなければならないとあります。

ESRS 1 パラグラフ42

何の根拠も無く「マテリアルでは無い」と判断してはならないのです。

ということで、「定量的・定性的」な評価軸に触れながら、次回、「重要性評価」をご案内していきたいと思います。

もう少しです。頑張って、読み込んでいきましょう。





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