ICVCMの目指す「Additional」とは?(2)
前回から、特定の再エネクレジットがCCPラベル認証対象外となった理由である「Additionality」について考えています。
前回はこちら。
対象外とされたのは、再エネクレジットが8種類と、SF6排出削減クレジットが1種類。
根拠資料としているのが、ICVCMが公開した「カテゴリー評価に関する見 再生可能エネルギー」という文書なので、再エネクレジットについてのみの説明になります。
この文書で議論しているのは、「再生可能エネルギープロジェクト」が「クレジットによる支援が必要な段階を超えて、成熟しているか否か」という「Additionality」の根幹です。
もちろん、十把一絡げにできるものではなく、先進国では既に商業的に成り立つ技術でも、後発開発途上国(LDC)や小島嶼国連合(AOSIS)では、まだまだ支援が必要という場合もあるでしょう。このことは、評議会でも指摘されているので、ひとまず脇に置いておきましょう。
さて、再エネクレジットのAdditionalityについては、2019年頃から、基準の改訂を見込んだ議論がなされていたようです。そもそも、Additionalityの評価自体が難しいという背景もありました。
CDMには「Clean Development Mechanism (CDM) Additionality Tools」というツールがありますが、このうち「1、2、19、21、32」を使用する既存の方法論は、ICVCMのアセスメントフレームワークに適合しないと判断。
この方法論を使用している、現在の「CCP-Eligible」プログラムに対し、見直しや具体的なガイダンス導入を検討するよう、促すそうです。
ことほど左様に判断が難しい「Additionality」ですが、再エネクレジットにおいて難しくしているのは、次の2つの概念が要因だとしています。
「グリッド排出係数(Grid Emission Factors)」については、皆さんもよくご存知ですよね。
ベースライン排出量からプロジェクト排出量を差し引いた差分がクレジットとして認証されます。ベースラインは、プロジェクト着手時に、一般的に導入されるであろう技術が選択されるのですが、これが恣意的に選択されれば、より多くのクレジットを得ることができる訳です。
現行の再生可能エネルギー方法論において、再生可能エネルギー方法論におけるグリッド排出係数の算定に許容される選択肢、及びこれらの算定に用いられる手順と基準は、評価枠組みが要求する保守性のレベルを全て満たしていないように見えるという、指摘がなされています。
CDMのツールも、ICVCMのフレームワークが要求する「保守性(conservativeness)」を満たしていないとしつつ、プロトコルの更新に取り組んでいることは評価しています。
続いて、「抑制された需要(Suppressed Demand)」です。
こちらは、あまり知られていない概念かと思います。
一言で言うと、現在の経済状況やインフラが不十分なために、本来必要とされるエネルギー需要が満たされていない状況のことです。使用できないから使っていない、使用できるようになると使うでしょ、ということ。
例えば、電気が十分に供給されていない地域では、将来的にインフラが整備されると、エネルギー消費が急増する可能性がありますよね。これが「抑制された需要(潜在的な需要)」であり、顕在化すると、通常の予測を超えるエネルギー消費が発生することになるという概念です。
図で表すとこのようになるのですが、「抑制された需要」を考慮すると、クレジットが多く創出されますよね。実際の排出量を、より現実的に評価できるという利点があります。また、途上国でプロジェクトを実施するインセンティブも働きます。
ですが、適切に考慮できないと、排出係数と同じで、モラルハザードを起こすことは容易に推測できます。
ということで、ICVCMの考える「Additionality」について見てきましたが、いかがだったでしょうか。
7月末に公開された、高品質なクレジットであるためのクライテリア、グローバルベンチマークに基づいて改訂される2026年に実施予定の次期バージョン、その議論の進捗もウォッチしていきたいと思います。
是非ともフォローしつつ、次報をお待ちくださいませ( ^o^)ノ
もしよろしければ、是非ともサポートをお願いします! 頂いたサポートは、継続的に皆さんに情報をお届けする活動費に使わせて頂きます。