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電力の使用による排出量(解説編)

4月29日のnoteで、電力事業に係わる事業者間で、「排出量はどのようにカウントされるのか?」という記事を書きました。今回は解説編です。

復習しておくと、事業者はこの4者

企業A:燃料採掘事業者
企業B:発電事業者
企業C:送電事業者・電気小売事業者
企業D:最終需要家

で、このような条件を付けていました。

  • 企業Aは採掘にあたり燃料のみを使用する

  • 企業Bは発電した電力を全て企業Dに販売する

  • 企業Bは自社では電力を使用しない

  • 企業Cは企業Bの電力を全量企業Dに送電する

  • 企業Cが企業Dへの送電に当たり10 tCO2相当のロスを生じる

  • 企業Dは電力を全量企業Bから調達し、その量は90 tCO2相当

で、結果はこうなります。

電気のバリューチェーンにわたる排出量の報告の仕方

企業Aは、例えばオーストラリアで露天掘りで石炭を採掘しているとしましょう。巨大なダンプが動き回っている光景が目に浮かびます。このように、炭鉱で採掘して輸送するに当たって、5tのCO2を排出しているとすれば、これはスコープ1となります。電力は使用していない前提なので、スコープ2はゼロ。

他方、販売した商品である石炭が使用(=燃焼)されれば、100t排出するとなると、スコープ3のカテゴリー11「販売した製品の使用」。非常に分かりやすいですね。

企業Bは発電事業者なので、購入した石炭を使って発電します。実際に燃やしていますから直接排出となり、スコープ1です。

企業Aが石炭を採掘して企業Bへ輸送するに当たっても排出されています。
購入している(=費用負担している)ので上流過程。カテゴリー1「購入した製品・サービス」やカテゴリー4「輸送・配送(上流)」が思い浮かびますが、
定義によりカテゴリー3「燃料・エネルギー関連の活動(スコープ1又はスコープ2に含まれないもの)」です。

カテゴリ3の説明
 カテゴリ3の対象は、報告対象年に報告企業が購入し消費した燃料およびエネルギーの生産に関係した、スコープ1又はスコープ2に含まれない排出量とする。

スコープ3排出量の算定技術ガイダンス

「電力」という「エネルギーの生産」に関係していますからね。

これについては、「企業のバリューチェーン(スコープ3)算定と報告の標準」に分かりやすい説明があります。

「エンドユーザーに販売された、購入した電力の発電」これも、カテゴリー3に含まれる具体的な活動なのですね。

さて、企業Cは送電事業者及び電気小売事業者です。
電線にも抵抗がありますので、遠くまで運べば途中で熱となって消費されてしまいます。途中で電圧を上げたり下げたり、いくつもの機器を通過します。企業Dに届く頃には、相当のロスが生じていることになります。

これらがカテゴリー3となるのは明確。

企業Cは送電に当たっていろんな設備を運用していますので、それらで使用する電力による排出量は、スコープ2として報告します。

その分のロスは、スコープ2の排出量が10tだとすると、採掘と輸送を担当している企業Aの排出量5tに企業Cの使用割合10%(10t/100t)を掛けて、0.5tとなります。カテゴリー3です。

さて、企業Cは企業Dに電力を販売していますので、その使用による排出量(=90t)があります。

さらに、販売する電力を発電するために使用した石炭の採掘、輸送による排出量も、4.5t(企業Aのスコープ1排出量(=5t)から、企業Cが使用した電力によるもの(= 0.5t)を引いたもの)あります。

これを合計した4.5tも、同様にカテゴリー3となります。
まだまだ、違和感があるかもしれませんが、慣れていきましょう。

最後に企業D、最終需要家です。
こちらについては、迷いは無いのではないでしょうか。

今回は、4.5tと10.5tに分けていますが、国内であれば、両者を一緒にした形で原単位が提供されていますので、単純に使用電力量と掛け合わせれば算出できます。

もちろん、一次データを入手してもよいのですが、全体の排出量に対して非常に小さい値となることが一般的ですので、その他のカテゴリーに注力した方が効率的でしょう。

ということで、2回にわたって、電気のバリューチェーンにわたる排出量の報告について説明してみました。

このような形で、コツコツとそれぞれのカテゴリーに対しての知見を高めていきたいですね。


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