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排出量算定〜スコープ3 カテゴリー1②

カテゴリー1のポイントをもう少し、あと3つだけ。

まず、第1点目。

企業の購入は、以下の2つのタイプに区別されると、前回指摘しました。
1.製造に関連した調達
2.製造に関連しない調達

スコープ3基準には1の例が示されています。

1.企業が加工、変成あるいは別の製品に組み込むために購入する中間物品(例えば、材料、構成要素と部品)
2.再販売(小売と配給の企業のみ)のために購入する最終物品
3.製品を製作し、役務を提供し、あるいは商品を販売、保管や配達するために企業が使用する資本財(例えば、プラント、資産と機器)

スコープ3基準

ここで「あれっ」と思うものがありそうです。
そう、3の「資本財」という表現。
原文でも「Capital goods」となっています。
不思議に思いながら、読み進めると、こうあります。

スコープ3基準

「な〜んだ。やっぱり、カテゴリー2じゃん」
ここで、カテゴリー2の説明を見ると、

一定の事例においては、特別の購入された製品が資本財(カテゴリー2として報告)あるいは購入された物品(カテゴリー1として報告)かについて曖昧となるかもしれない、企業は、購入された製品をこのカテゴリーの資本財としてあるいはカテゴリー1の購入された物品あるいは役務として説明するかについての判定は、自身の会計手順に従うべきである、企業は、カテゴリー1とカテゴリー2の間で二重カウントしないようにすべきである。

スコープ3基準

どちらで算定するかということは、大して気にすることでもなく、自社の会計上、どのように分類しているかで判断しなさいということです。
ただ、ダブルカウントはダメです。「どちらか」です。

続いて第2点目。
「1.製造に関連した調達」の例示中の2.について。

製造に関連した、つまり、自社の事業に関連した調達であって「再販売のために購入する最終製品」とは何を指すのでしょう。事業として最終製品を調達する業種は何になるのでしょう。

そう、商社、卸売業ですね。

販売目的で調達(購入)し、最終的には小売店へ販売する物品であっても、カテゴリー1で算定しなければならないのです。当業者にとってみれば、「最終的には社内に残らない物も算定するのか?それって損じゃない? 」文句の一つもいいたくなりそうです。

しかし、ルールではそうなっています。ただ、もう一度考えて下さい。
バリューチェーンでの排出量は、他社比較ができないのが基本です。
従って、他社に比べて多いから、少ないから、という議論は無意味です。
最初に正直に算定しておき、減らしていけばよいのです。

CDPは、目的に対して、計画を立てて、着実にそれを実行しているかを詳らかにし、投資家がその取組を評価します。どうでしょう。このように考えると、より排出量の少ない商品を取り扱おうというインセンティブが働き、サプライヤーも極力排出量が少なくなる製造を志向することになるでしょう。

自社が削減に影響を及ぼすことができる範囲が「スコープ3」なのです。

最後3点目。

カテゴリー1は「購入した物品・サービス」です、
購入、調達したものなので、所有権は自社にあります。
自社に所有権が無いものは、カテゴリー1算定対象外です。
これも、しっかり抑えておきましょう。

商社は、与信リスクを負うことで収益を上げる業種。
自社で商品を調達するのが基本です。
他方、在庫を持たず、仲介手数料のみの商売であれば、算定不要。
算定の実務では、このあたりが複雑に絡み合って大変なんですね。

所有または管理する」という概念は、スコープ1や2でも議論しました。
覚えていらっしゃいますか?

算定を進めていくと、次から次に、面倒な作業が発生します。
「???」となって、進まなくなることも日常茶飯事。

そういうときには、是非頼って下さい。
私も、勉強させてもらいます。


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