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IPCC AR6 完了、AR7始動

IPCC第58回総会が、2023年3月13日から3月20日にかけて、スイスのインターラーケンで開催され、2014年の第5次評価報告書(AR5)統合報告書以来、9年ぶりに、統合報告書の政策決定者向け要約(SPM)が承認されるとともに、同報告書の本体が採択されました。

その後、各メディア、環境NGO/NPO、コンサル、業界団体等々、あらゆるところ採り上げられ、解説記事が書かれ、ウェビナー開催され、お祭り状態だったのはご案内の通りです。

現在、環境省のSPMの要約の概要を参照するのが良いかと思います。

AR6のSPM本体については、政府において日本語訳を作成し、4月下旬をめどに環境省のウェブサイトにて公開する予定だそうです。


ですが、ここで「???」って思われた方もいらっしゃるのでは?
「あれっ、もう公表済だったのでは?」

実は、今回公表されたのは「統合報告書」

IPCC の第6次評価サイクルの最終段階です。これは、過去 18 か月ほどの間に発行された3つのワーキンググループ(作業部会)レポートの主な調査結果を「統合」しているのです。

第1作業部会(WGⅠ)報告書:自然科学的根拠(2021年8月9日)
第2作業部会(WGⅡ)報告書: 影響・適応・脆弱性(2022年2月28日)
第3作業部会(WGⅢ)報告書:気候変動の緩和(2022年4月4日)

IPCCはこのように、IPCC総会の元、3つのワーキンググループ及びタスクフォースからなっていて、作業部会がそれぞれの報告書を、それぞれ個運用してきたので、すでに、AR6は終わったように感じていたのです。

Structure of the IPCC(IPCCウェブサイトより)

ちなみに、この「統合報告書」は、IPCCが第6次評価サイクル中に公表した、次の3つの短い「特別報告書」も考慮されています。

1.5℃特別報告書(2018年10月8日)
土地関係特別報告書(2019年8月8日)
海洋・雪氷圏特別報告書(2019年9月25日)

統合報告書は、第1〜3作業部会報告書よりもはるかに短く、SPMと基礎となるレポートを合わせた長さは122ページに程度です。これは、予定されていたページよりも長かったとか。もちろん、その他の報告書同様、専門家と政府による複数回のレビューを経ています。

SPMは、先週スイスで著者と政府代表が参加する、行ごとの承認セッションを介して承認されました。というのも、報告書本体は完全に中立な立場での記述ですが、SPMは「政策決定者向け」であるが故、各国の意向・思惑を盛りこんで「最終決定」されるのです。

まぁ「赤を入れる」ようなものなので、表現はやんわりとした、曖昧なモノにならざるを得ないことは、想像つきますよね。

「国際会議あるある」で、承認プロセスは3月17日(金)に完了する予定でしたが、何度も「夜間セッション」や「24 時間ぶっ続けの審議」が行われたにもかかわらず、オーバーラン。19日(日)の朝、「まばらに出席した部屋」で最終的に承認されたとか。

その後、SPMは20日の月曜日の午後、記者会見で発表されました。報告書の本体の方は、2日後に公開と相成りました。


2014年から2023年、足かけ9年の第6次評価サイクルが「統合報告書」の公表で幕を閉じました。当初は、22年9月に予定されていたところ「マネジメント能力の欠如」で遅延、その後も透明性を欠いたIPCCの振る舞いにより、各国政府から相当の不満が表明されていたとのこと。

予定されていた期日に完了していなかったにもかかわらず、各国政府は昨年9月の会議で、IPCC の第 7次評価サイクル(AR7)が今年23年7月に開始され、5年から7年の長さになることに合意しています。

半年遅れで終了したAR6から間髪明けず、AR7が始動、議長、副議長、作業部会の共同議長を含む新しいIPCCチームが選出されます。このチームの「マネジメント能力」次第では、AR7の最初の報告書(第1作業部会報告書?)は、 2028年くらいまで期待できないかも。気長に待ちましょう。

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