カーボン・クレジットの種類について
カーボン・クレジットについて説明する際は、無難で安心できる出典として、経産省の「カーボン・クレジット・レポート」を参照しています。
レポートによると、カーボン・クレジットは、次のように分類されるとあります。(本文は文章ばかりで分かりにくいので、概要を使って説明します)
このように、「排出回避/削減」クレジットと「固定吸収/貯留」クレジットと、大きく2つに分かれます。前者は「削減回避系」、後者は「吸収除去系」とも呼ばれており、今後はこちらで表現しますので、ご承知おき下さい。
レポートでは、それぞれ、自然ベース/技術ベースでさらに細分化していますが、名前の通り、削減系/回避系、及び吸収系/除去系とで分類することもできます。
まぁ、吸収除去系における吸収系/除去系は、自然ベース/技術ベースとほぼ同じなのですが、削減回避系では、ちょっと事情が異なります。
これについて、先日SBTiが公開した「Scope 3 discussion paper」に分かりやすい説明がなされていたので、ご紹介したいと思います。
以前noteでご紹介した、「削減貢献量」と「削減実績量」の関係と同様と考えればよいのではないでしょうか。
「削減貢献量」は、比較対象が業界平均(更新するのであれば、一般的に選択されるであろう製品)のように曖昧な製品だったのに対し、「削減実績量」は、自社の過去の製品(代替される製品)という明確な対象と比較し削減量を算出します。
ですので、確からしさからいうと「削減実績量」の方が高く、メーカーは堂々と主張することが可能です。
回避クレジットは、比較対象が「クレジット収益が無ければ導入されたであろうプロジェクトに依る排出量」あるいは「プロジェクトが実施されなかった場合、潜在的に発生したであろう排出量」です。他方、削減クレジットは、「既存のプロジェクトによる排出量」がベースラインとなります。
回避クレジットは「仮想」排出量であるところ、削減クレジットは「実績」排出量なので、確からしさは、後者が高いということになります。
昨年リリースされた、「ISO14068-1 2023 Climate change management-Transition to net zero- Part:1 Carbon neutrality」において、カーボン・ニュートラリティを達成する手段として、削減及び回避、両クレジットも挙げられていますが、削減クレジットの方がベターと言えるでしょうね。
なお、ネット・ゼロ達成においては、IPCC及びイニシアチブいずれも、使用できるクレジットは、吸収除去系のみとしていることには留意しましょう。
ちなみに、吸収除去クレジットを、同じような形で説明したのがこちら。
左図は、技術ベース/除去系として、地中への炭素隔離を例に説明しています。隔離するに当たってエネルギーを必要とすることから、それによる排出を考慮しなければなりません。
右図は、自然ベース/吸収系として、森林経営などにより森林吸収が増大することを表しています。こちらにおいても、化石エネルギー使用による排出はあるはずですが、分かりやすく対比させるために、敢えて記載していないのでしょう。
いずれにしても、削減回避クレジットは「CO₂ emissions」であり、吸収除去クレジットは「CO₂ removals」であることが重要です。
ネット・ゼロは、最大限削減努力を行い、それでも、2050年段階で残っている排出量(残余排出量 Residual emissions)を「中和」して「ゼロ」にすることですので、「CO₂ emissions」である「クレジット」は使用できませんから。
ということで、十把一絡げにされがちなクレジットについて、少し突っ込んで考えてみました。
「当たり前だ」「こんなの知ってるよ」という声も聞こえてきそうですが、皆さんに正しく理解して頂けるよう、繰り返し説明することも私の役割だと思っています。
なので、ご遠慮なさらずに、疑問質問、ドシドシお寄せ下さい。
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