SBTi Scope3 discussion paper の衝撃?!(1)
7月30日、SBTiが、Corporate Net-Zero Standard(CNZS)の改訂プロセスの初期段階として、4つの技術的成果を発表しましたが、このニュースで、サステナ界隈が少しザワザワしているように思います。
リサーチした訳ではありませんが、ポジティブな意見には、強い肯定的な感情を示すものが多かった一方で、ネガティブな意見は、比較的穏やかなトーンで表現されている傾向かなと。
地域としては、欧米企業やNGOからの発言が目立ち、アジア地域からの発言は比較的少なかったイメージ。サス担からの声が多かったのは当然として、製造業やエネルギー業界からの発言が多かったように思います。
GHGプロトコルと比較したコメントもありましたが、個人的には、一貫した「現実路線」のように感じました。
これらの文書は、SBTiによって検討されている潜在的な修正とともに、これまでに受領された証拠の要約を提供することを意図しており、更新されたガイダンスとして解釈されるべきではなく、また、今後予定されている変更を示唆するものでもありませんが、気になりますよね。
かく言う私もその一人で、まずは「Scope 3 discussion paper」に目を通して見ました。非常に示唆に富んでおり、参考になる情報も盛り込まれていましたが、今回は、ポイントだけご紹介したいと思います。
着目したのは、次の2つのポイント。
サステナ界隈がざわついた要因が、「オフセット」を認めたことでしょう。
同時に公開された「Synthesis report of evidence on the effectiveness of Environmental Attribute Certificates in corporate climate targets – Part 1: Carbon credits」に、次のように定義されています。
具体的には、次のように、バリューチェーン内の排出量に対するオフセットの割合(Baseline emissions for which companies are expected to take responsibility through BVCM)が、2050年ネット・ゼロへ向けて徐々に減らす計画を認めるというものです。
もし、企業や国・地域、といったバウンダリーが無かったらどうでしょう。
国別削減目標であるNDCや、企業毎の削減目標など不要ですよね。
一つの、世界全体の削減目標があれば良い訳です。
なので、「BVCM」という概念が存在しなくなり、企業はクレジットを購入して「オフセット」することで、世界の排出削減に寄与することになります。
もちろん、ネット・ゼロ目標年である2050年には、自社努力により、10%の残余排出量まで減らすことは「Must」ですので、いつまでも頼ってはいられません。早めに着手べきなのは当然です。
SBTiが、このような「現実路線」に舵を取ったのは、グローバル企業のバリューチェーンに入っていないような企業や地域に対する、ファイナンシングが必要だという課題意識からだと思います。
脱炭素化に資する商品開発を行う企業や、サービスを提供しているコミュニティなどに資金が還流することで、誰もがリーズナブルな価格で利用できるようになれば、世界全体の削減に近づきます。
これは、First Movers Coalitionや、Breakthrough Energy Catalystと共通する概念ですね。
モラルハザードに陥らないような制度設計が必要かとは思いますが、期待したいところです。
詳細については、別途ご案内してきたいと思います。
次回は、「2.アウトカムベース指標」についてご案内しますね。
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