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COP28はオイルの香り?

国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第28回締約国会議(COP28)は、2023年11月30日から12月12日までの日程でUAEにて開催されます。COP27がエジプトのシャルム・アル・シェイクでしたから、2年続けていわゆる「MENA地域(Meddle East North Africa)」で開催されます。

国連が22年11月15日に発表した世界人口予測2022年版によると、同日付で世界人口は80億人を突破したそうです。さらに、世界人口は2080年には100億人を超え、ピークに到達すると予測しています。

世界人口(1950年〜2100年) UN Data Portalより筆者作成

このうち、人口増加を牽引するのは、ご想像の通りアジアとアフリカ。
それでも、アジアが2050年頃にピークアウトしても、アフリカは増え続け、2100年には世界の40%を占めるまでになりそうです。

エリア人口(1950年〜2100年) UN Data Portalより筆者作成

中東・北アフリカ地域についてもう少し詳しく見ると、エジプト、イラク、イエメンなどが地域の人口増加を牽引し、2021年の5億6,000万人から2027年に6億人、2041年に7億人、2060年に8億人を突破し、2095年にピークの8億6,000万人に到達するとの予測。

なので、これからは「アフリカの年」となることは間違い無いところ、その盟主であるエジプトでCOPが開催されたことは、象徴的かつ必然であったかとは思います。(まぁ、シャルム・アル・シェイクという、大陸の外の一大観光地での開催だったことはおいておきましょう)

都市部に人口が集中することに起因するゴミや交通渋滞といった、生活環境悪化に苦しむエジプトで開催されたことにより、様々なイニシアチブも立ち上がりました。

なので、個人的には「Implementation COP」と言われ、期待されていた程度の成果は上げたと評価しています。

他方、COP28は、開催地がUAEという主要な原油生産国で実施されることに加え、議長がスルターン・ビン・アフマド・スルターン・アール・ジャーベルUAE産業・先端技術相兼アブダビ国営石油会社(ADNOC)最高経営責任者(CEO)となったことから、各所から様々な批判がなされています。

ジャーベル氏は、世界有数の石油会社のCEOである一方で、UAEの気候変動担当特使や、アブダビに拠点を置く再生可能エネルギー企業マスダールの創設者・会長でもあるなど、UAEの気候変動対策における中心的人物。環境危機に対する世界的な取り組みに大企業が介入するとの懸念は拭えず。

アムネスティ・インターナショナルの気候・経済・社会正義担当ディレクターであるマルタ・シャーフは、次のように述べています。

COP28議長としての彼の役割とは完全に相容れません. [彼は] 彼が率いる会社がより多くの気候被害を引き起こすことを計画している場合、気候交渉の誠実な仲介者になることはできません。

これについて、「相反する二重の役割」を暗黙のうちに擁護しているのは透けて見えるのですが、次のように反論しています。

そうです、エネルギー産業が協力し合い、世界が必要としている解決策について皆と協力することは、私たちの共通の利益です。それは論理的で理にかなっています。

もちろん、このような批判や懸念は当然であり否定はしませんが、もう少しニュートラルな立場で見守ろうかと思っています。

私は、電気管理業を生業としていますので、電力の脱炭素化は推進すべきと認識しつつも、要求を満たす品質の電力が、許容できるプライスで、安定的に供給されなければならないと考えています。「産業の米」ですから。

なので、環境NGOが主張するように、一足飛びに再エネ電力100%はできないとの立場です。化石燃料や原子力を完全に否定するのではなく、技術開発は進めるべきと思っています。選択肢は広く残しておいてほしいです。

ということで、ダイベストメントも諸手を挙げて賛成ではなく、オイルセクターが移行できるような資金というのは供給されるべきと考えています。そうすると、金融機関としてはスコープ3排出量が短期的に増えることになってしまいますが、それも金融の役割の一つと認識してほしいところ。

そのような資金をどのように活用して2050年ゼロカーボンを達成するかは、当該セクター自身が考え実施していく必要があります。内部から改革が進まないと実現しないと思います。

UAEがドバイで開催する年次会議である世界政府サミットで語った言葉を半分信じ、原油生産の本丸で実施される、本丸の企業のCEOが議長を務めCOP28では、その「本気度」を見てみたいと思っています。

集団的な政治的意思があれば、ゲームを変えるような解決策を達成できると信じています。それは確かにアラブ首長国連邦からです。私たちアラブ首長国連邦は、エネルギー転換をためらいません。私たちはそれに向かって走っています。

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