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バイオマス発電の悩みどころ

バイオマス使用によるGHG排出量については、算定ルールによって取り扱いが異なっていることは、皆さんご承知かと思います。

算定した上で別途報告であったり、カーボンニュートラルとしてそもそも算定不要(算定対象外)だったり。

2022年3月17日 第2回 算定方法検討会資料より

直接排出では、例えばSHK制度では、CH4及びN2Oの対象となる排出活動として「バイオマス燃料の使用」があります。それでなくとも、事業者が「バイオマスを使用している」という認識があるので、必要であれば算定できるところでしょう。

他方、間接排出、つまり電力や熱・蒸気のエネルギー源として、一部あるいは全量をバイオマスで賄っていた場合はどうでしょう。

算定業務に習熟していくと、このような、当初は気づかずやり過ごしていた疑問点に気づくことが、ままあるかと思います。支援する側からしても、気づいていなかった論点だったりします。ですので、このような質問は私にとっても学びになり、非常に有難いところです。

前置きはこれくらいにして、算定方法のデファクトスタンダードである、GHGプロトコルに当たってみましょう。スコープ2ガイダンスには、次のように説明されています。

GHGプロトコル スコープ2ガイダンスより

バイオマスは、太陽光や風力と異なり、生産及び輸送過程などの、上流過程の排出量が存在します。ですが、上記の説明では「スコープ2で報告がなされなければならない」とあるので、これを指して「依然としてGHGを排出し」と言っているのでは無さそうです。

スコープ2で報告ですので、発電の際に排出されるGHGであり、具体的にはCH4やN2Oを指していると考えられます。

バイオマス持続可能性WGで、バイオマス発電における発電までのGHG排出量の既定値を算定していますが、発電においても「依然としてGHGを排出し」ていることを示しています。

2023年7月6日 第三次中間整理より

栽培や輸送、加工工程は、発電の上流過程です。こちらは、GHGプロトコルでは、スコープ3のカテゴリー3で算定することになります。

そうすると、再エネ100%電力を購入している場合で、バイオマス発電を含んでいる場合はどうなるのでしょう。排出係数は提供してもらえても、その内訳を明らかにしている小売電気事業者は、あまり無いのではないでしょうか。あっても、電源別に係数を提供している例は無いでしょう。

これについては、GHGプロトコルも了承していて、ガイダンスの中で、次のように言及しています。結局、そのような事実を抑えておきましょう、ということなのでしょう。

GHGプロトコル スコープ2ガイダンスより

GHGプロトコルに則った報告はこれでよいとして、RE100に参加している事業者はこれでよいのか、という更なる疑問が出てくるかもしれません。

RE100技術要件には、次のような説明がされています。

RE100技術要件より

「持続可能に調達したバイオマス」が要件で、「第三者検証を推奨する」とあります。では、必ず検証が必須かというと、そうではないようです。

RE100技術要件より

いずれにせよ、RE100を目指している事業者は、買電の際、小売電気事業者に要件を満たしているかを確認した上で、契約を結ぶ必要がありますね。

ということで、バイオマス発電におけるGHG排出量について、ちょっと突っ込んで考えてみましたが、いかがだったでしょうか。

このように、算定の知見は、繰り返し行うことにより着実についてきます。
ですので、人任せにせず、しっかりと自分で汗を流すことが肝要。
お手伝いしますので、算定の「はじめの一歩」を歩み出しましょう。




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