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サステナ担当悩みどころ(2 )

サス担の方々が、日々の実務の中で直面するお悩み事、様々ありますよね。
前回単発で書いたところ、また、色々と質問を受けました。

なので、時折ご案内していこうと思います。
2回目の今回は、「検証を受けるときのデータ」についてです。

SSBJが日本版S1・S2の確定基準を今年度末までに公表することに加え、金融庁が、有価証券報告書において、財務情報と併せてサスティナビリティ関連情報についても開示義務化を目指しているなど、開示周りが俄然盛り上がっているのは、ご案内の通り。

自主開示、法定開示にかかわらず、算定の要請は高まっていますよね。

数年前までは、自社で算定したものを、ウェブサイトや統合報告書などによって自主的に開示すれば「先進的」だったところ、グローバル企業にとっては、ほぼ義務的な状況。算定結果についても、第三者の検証を受けていることが当たり前となりつつあるようです。

そして、繰り返しご案内しているように、算定は、毎年繰り返すことにより担当者の知見も向上し、収集するデータも精緻なものになっていきます。

今回の質問は、ハイレベルになった担当者のお悩み事です。

既に、スコープ1・2については、担当部署から集計する仕組みを構築できており、スコープ3についても、サプライヤーから排出量を報告してもらおう考えていたとのこと。そこで出てきたのが、「果たしてそのデータが検証に耐えうるか」というクエスチョン。

今までは、スコープ3のカテゴリー1において、物量データと公開されている排出係数DBを用いていたところ、さらに、次の高みを目指すというもので、算定のあるべき姿へ向かう、素晴らしいムーブです。

先に回答しておくと「検証機関による」です。

自分の経験を申し上げますと、スコープ3は限定的保証しか経験ありません。
おそらく、どの検証機関も出したことは無いのではないでしょうか。

スコープ1・2であれば、信頼性の高いエビデンスを収集することができますし、算定体制等その他の条件が整っていれば、合理的保証を出すことができます。自社の直接及び間接排出量なので、十分可能でしょう。

スコープ3は、話が違います。
サプライヤーとはいえ「他社」です。
排出量の算定及び報告を無理に要求すると、下請法に問われかねません。

なので、「一緒にやりましょう」という関係性を保ちながら協力をお願いしていくことになりますが、それでも、限度はあります。

サプライヤーから報告してもらったデータは、「一次データ」とされますが、検証の場面では、異なります。

「二次データより正確だから」という一般的な理論が通るか否かは「検証機関」が判断するという点。

サプライヤーから直接入手したデータだから「より正確である」と推定する検証機関もあるかもしれませんし、スコープ1・2同様、サプライヤーのデータも検証する必要があると判断する機関もあるかもしれません。

金額や物量と排出係数から算定するよりも、サプライヤーから直接入手する方が、より現状を反映しており正確であることは間違い無いのですが、それを証明することが難しい。

他方、排出係数による算定であれば、金額・物量についてはエビデンスを確認できれば、公開DBは信頼性は担保されているので、保証は容易。

なので、検証を受けようと思うと、金額・物量ベースの算定となってしまうのです。これは、検証機関側も同じ話。何とも、悩ましい話なのです。


サプライヤーのデータの検証について、少し実際的な話をしましょう。
まず、サプライヤーが自社で検証を受けてくれていればラッキー。

ですが、そうでない場合は、べき論から言うと、算定に使用したデータと算定方法(ルールや係数)を出してもらい、検証機関が被審査企業のデータを検証するのと同様の検証を行うことになります。

その際、検証機関との契約において「重要性の判断基準」をどのように設定しているかを考慮します。(もちろん、自社の検証も同じです)

例えば、「5%」としているのであれば、そのサプライヤーから購入している原料の製造による排出量が、全体の5%未満であれば、カットオフしたり、サプライヤーにエビデンスの提出を求めない、といった対応になると思います。まずは、大雑把にどの程度になるかを見積もることが肝要ですね。

このように、スコープ3の算定結果について検証を受けようとすると、サプライヤーを巻き込んだプロジェクトとすることが必須となりますが、それに当たっては、最初から検証機関に「お問い合わせ」をしておきたいです。

すべからく、意見表明するのは「検証機関」だからです。
まぁ、だからこそ、検証機関によっては、融通が利く・利かないみたいな話がでてくるんですけど。

ということで、結論としては「検証機関による」となるのです。

個人的には、是非ともチャレンジしてもらいたいと思っています。
私は、そのようなチャレンジャー、エバンジェリストを応援します。

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