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セメントセクターも頑張ってます

建築において欠かせない「コンクリート」

木材、とりわけ国産材の活用が進んでいますが、やはり、高層建築物や耐火性の観点から、「脱コンクリート」は電力ほど「脱化石燃料」ほど容易でないことは理解できます。

セメントセクターは巨大産業であり、発電部門に次いで第2位のCO2大量排出セクターですから、SBTiはセメントセクターガイドライン(SDA) の開発を急ぎ、昨年9月にリリースしたところです。

コンクリートは、セメント、水、骨材、混和材料から構成されます。そのセメントは、クリンカーに適量の石膏を加え粉砕したもの。クリンカーは、鉱物や無機物質を焼き固まったもの。クリンカーは原料を1500度近くまで熱し、その後急激に冷やすことでできるそうです。

なので、コンクリートに使用するセメントの量を減らすことができれば、セメントに使用するクリンカーの量を減らすことができれば、当該セクターの排出量を減らすことができるという算段です。

ということで、各社、様々な研究開発を行っている所ですが、その中で清水建設が「バイオ炭を用いてコンクリート内部に炭素を貯留する自社開発の環境配慮型コンクリートを実工事に初適用した」と発表しました。

バイオ炭コンクリートは、木質バイオマス(オガ粉)を炭化したバイオ炭をコンクリート1m3あたり20~80kg混入した環境配慮型コンクリートで、バイオ炭の混入量1kgあたり2.3kgのCO2を固定化できます。

プレスリリースより

バイオ炭とは、燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350℃超の温度でバイオマスを加熱して作られる固形物のことです。

このバイオ炭を農地に施用することで難分解性の炭素を土壌に貯留することができるとして、J-クレジットにできることとなりました。

プレスリリースでは、「カーボンネガティブを実現できます」としていますが、炭素固定量の取り扱いは明確にルール化されていません。

GHGプロトコルやSBTi、CDPなどのイニシアチブは、吸収量と排出量は分けて報告すべきとしていますので、情報開示に当たっては表現に留意する必要があると思います。

セメント材料に低炭素型の高炉セメント類を使用すれば、普通コンクリートのCO2排出量と比べて最大118%のCO2削減効果が得られ、削減量が排出量を上回るカーボンネガティブを実現できます。

プレスリリースより

それよりも、単純に、クリンカーの使用量削減による排出量削減とすれば良い話です。前述したように、クリンカーは、鉱物を高温で焼き固めたものであり、これがセメントセクターが多排出セクターである所以ですから。

ちなみに、セメントセクターガイドラインでは、クリンカー製造による排出量は、無条件に算定対象とされています。

ことほど左様に、セメントセクターの排出量の大部分はクリンカー製造によるものであるため、自社製造せずに外注してしまえば、簡単に排出量を削減できてしまいます。なので、バリューチェーン排出量の算定において、スコープ3カテゴリー1として、算定が義務となります。

なお、J-クレジットに「バイオ炭の農地施用」という方法論ができたことは、非常に注目されております。(というか、注目されているから、運営委員会へ申請がなされ、すみやかに検討、認証されたということですが)

炭素固定量という環境価値については、バイオ炭以外でも各所で検討がなされており、私としてもウォッチしているところです。進捗については、随時ご案内していきたいと思っています。乞うご期待。

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