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非化石価値取引市場取引結果斜め読み

JEPX(日本卸電力取引所)は、22年度第2回目の取引結果を公表しました。

取り引きはオークション形式で行われ、年度内に4回(8月・11月・2月・5月)実施されます。

この「非化石価値取引市場」および「高度化法義務達成市場」とからなり、取り扱っている証書は、それぞれ次のようになっています。

「高度化法義務達成市場」
・非FIT証書(再エネ指定あり):大型水力など
・非FIT証書(再エネ指定無し):主に原子力

「再エネ価値取引市場」:FIT証書

一般の事業者が、省エネ法の報告において、他者から購入した電力による排出量(間接排出量)を削減するために購入する証書は「FIT証書」です。

他方非FIT証書は、いずれも、高度化法の規制対象となっている電気事業者が、義務を達成するために使用するもので、一般的には関係ないです。

ただ、これはあくまで国内法の縛りによって発生している需要なので、用途によってはいずれを使っても構いませんし、再エネ指定でトラッキングがついていれば、RE100などには使用できます。

第72回制度検討作業部会資料より

FIT証書は全量トラッキングされていますし、非FIT証書も現在トラッキング実証試験中です。JEPXは1〜2年後を目処に、非化石証書の全量トラッキングを実現する方針です。

これらの証書が何に使えるかは、こちらにまとめました。

なお、RE100は、24年1月以降は、稼働から15年を超える再エネ発電設備から供給された電力は対象外となります。なので、そのような設備から発行された非化石証書も対象外となることに注意下さい。


報告書を分かりやすくグラフにしてみました。

入札会員数

FIT証書は、これまで購入できるのは電気事業者のみだったところ、21年度第2回目から需要家や仲介者も購入できるようになりました。

ただ、JEPXの会員にならないと取引ができないので、需要家が直接購入するというよりも、仲介事業者が依頼を受けて入札することがほとんどです。ただ、国内では、自社の排出削減に直接活用できる手段は先ず「電力」であるところ、手段が少ない。

自家発電やPPA(オンサイト・オフサイト)のようなコストがかかる方法と比較して安価な非化石証書が好まれ、このように、入札会員数の伸びになっているのでしょう。


売入札総量[千kWh]


買入札総量[千kWh]


約定量[千kWh](入札量とスケールの違いにご注意下さい)


約定量/売入札量[%]

こうしてみると、FIT証書は売りは、非FIT証書(再エネ指定有り・無し)よりも遥かに多い一方、買いは大差ないことが判ります。また、FIT証書は、約定量は増加傾向ですが、非FIT証書はバラツキがあります。

これは、高度化法の達成義務は30年度が目処であるところ、中間目標も設定されています。なので、両者を睨みながらの調達となるので、対象事業者によって戦略が分かれていることが要因かと。

ただ、第1回目と比較すると、再エネ指定無しで約1600倍、再エネ指定有りで約32倍と急増しています。必要に迫られた新電力だけが、買い手に回っているとは甚だ考えづらいですね。

約定量/売入札量は「落札率」と言ってもよいかと思いますが、FIT証書は極めて低調。メディアでは、仲介業者に需要家からのオーダーが殺到しているとか、注文が多くてキャパを増やしている仲介業者が出ているとか、様々な報道がなされていますが、これが現実なのでしょう。

落札価格も、最低価格(非FIT証書:0.6円、FIT証書:0.3円)に張り付いているのも、市場が活性化していないことの表れ。経産省は脱炭素化に向けた再エネ電源への投資を促すため、23年度分のオークションから下限を引き上げる方針だそうです。

このnoteでは、このような「エビデンス」も適宜拾いながら、皆さんの判断基準になるような記事をお届けしたいと思っています。

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