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鉄鋼セクター別アプローチリリース(2)

前回から、今年7月にリリースされたSteelのSDAについて説明しています。
SDAとは、セクターに固有な状況・特性を考慮し、炭素強度、いわゆる原単位を目標設定に用いるアプローチ方法です。

「Steel」セクターに特有な状況は主に2つあり、1回目では「1.CO2多排出プロセス」を考慮された内容について説明を行いました。

1.CO2多排出プロセス
2.製造方法(高炉か電炉か)

今回は「2.製造方法(高炉か電炉か)」について反映されている点について説明していきたいと思います。

はっきり言うと、SBTiは「電炉推し」です。
「高炉から電炉へ」「鉄鉱石ベースからスクラップベースへ」という流れ、インセンティブを生み出すために作成されたSDAと言ってもよいでしょう。

SBTiは、1.5℃目標達成のための「Carbon budghet」に基づき、それぞれの予算を各SDAに割り当てています。

なので、SDA毎に用意されているエクセルツールに、基準年と目標年、基準年排出量を入力することにより、削減経路(Pathway)が描けるわけです。ちなみに、鉄鋼セクターでは、1.5℃目標しか選べません。

鉄鋼セクターが選択しているシナリオは、IEAのネットゼロシナリオ(IEA-NZE)です。選択根拠については、議論しませんので悪しからず。

Steel SDA ローンチウェビナーレジュメより

IEA-NZEだと、鉄鋼セクターの炭素予算は53GtCO2eということですが、それをSDAでは、鉄鉱石ベースだと46GtCO2e、スクラップベースだと7GtCO2eというように区別して割り当てて、異なるPathwayにしています。

Steel SDA ローンチウェビナーレジュメより

排出プロファイルが根本的に異なるからだとしていますが、これに従うと、スクラップを原料に鉄鋼を生産する場合は、鉄鉱石から生産する場合と比較して、緩やかな削減努力でよいということになります。

ですので、前述したように、企業はスクラップを原料とする、高炉から電炉へ切り替えようという動機が生じるわけです。もちろん、相当の経営判断になりますからすぐに実現するものではないですが、ロードマップが示されたという意味で、エポックメイキングな事象であることは確実でしょう。

ただ、「高炉メーカーが割を食う」ようなルールにはしないとしています。

Scrap-input dependent pathways:
Scrap steel is treated as global common good, which benefits are recognized at the sector rather than company level, given its unequal distribution between industrialized and industrializing economies.

Steel SDA ローンチウェビナーレジュメより

「鉄スクラップはグローバルな共通財」として扱われる、つまり、リサイクルのベネフィットは、排出する側だけで無く、使用する側だけで無く、セクター全体で享受するという考え方です。

LCAでは、リサイクルのベネフィットの扱い方という課題があり、結論が出ていないところではありますが、鉄鋼セクターSDAでは、それを一段高いところで一応の決着を付けているという感じでしょうか。

Steel SDA ローンチウェビナーレジュメより

このように、より多くスクラップを使用するようにすると、削減経路が緩和されます。「Large increase」だと、そのまま鉄鉱石を原料としていた場合は、20年比で29%削減しなければなりませんが、16%の削減で、2050年目標は達成できるという予想になっています。

Steel SDA ローンチウェビナーレジュメより

例えば、中間目標として鉄スクラップへの切り替え率を50%とした場合、スクラップベースのベネフィットが考慮され、上のグラフのように大幅な原単位削減につながるようです。

ということで、鉄鋼セクター別アプローチ(Steel SDA)の、特に特徴的な点についてご案内しました。

鉄鋼セクターに限らず、その他全ての産業において、資源を循環させるアプローチ、CE(Circular economy)が今年のホットワードになっています。

リサイクル品がバージン品と同等の品質を保てるのか、エネルギー的に有利なのかは、専門でないので分かりません。しかし、そのスペックの材料で成立する設計、製品、あるいは、その品質を許容できるユーザーなど、視点を変えることで、サスティナブルな社会が実現するのかもしれません。

なお、鉄鋼やアルミニウムなどのスクラップを利用する場合のベネフィットについては、CBAMでも議論になるところです。

こちらについては、また別の機会にご案内したいと思います。
引き続きのご愛読、よろしくお願いします。


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