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IFRS S1・S2が目指すところ

先日、日本版S1・S2プロジェクトの進捗状況をご案内しました。
月1回以上のペースで鋭意検討中のようなので、当初の予定通り、2023年度中にはドラフトが公開され、パブコメ実施。フィードバックの内容を反映して、2024年度中には確定基準がリリースされるのでは無いでしょうか。

とはいえ、S1・S2は来年2024年1月1日移行に開始する年次報告期間から適用が可能になりますので、任意開示にはなりますが、これに基づいた開示を行ってもよいわけです。

個人的には、将来の日本版S1・S2のリリースをにらんで早めに着手し、準拠した開示の練習をしておくことをお奨めします。

というのも、IFRS S1・S2自体は、「どのような国・地域(法域:Jurisdiction)でも採用できること」に加え、「法定開示とすること」を目的に開発された基準だからです。

そうです、ISSBは「各法域の規制当局がS1・S2に準拠した、法定開示基準を作成すること」を求めているのです。

日本の場合は、SSBJが日本版S1・S2を策定します。この段階では「任意開示」ですが、その後、金融庁が有価証券報告書において、日本版S1・S2に準拠したサステナビリティ情報開示を義務化することにより「法定開示」となります。

実は、2023年1月31 日、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」が公布・施行され、2023年3月期から、有価証券報告書の提出会社はサステナビリティ情報に関する開示は義務化されています。

その内容は「ガバナンス」「リスク管理」が必須の記載事項、「戦略」「指標及び目標」はその重要性に応じて記載することとなっていることに加え、細かな記載事項をあえて規定せず、各企業の現在の取組状況を柔軟に記載できるように配慮されています。

ですので、大和総研が行った調査によると、「有価証券報告書の提出会社(3 月決算、約 2300 社)全体でみると、サステナビリティ開示に関して未だ十分な記載をできていない企業や、社会(人的資本、多様性)に関して独自性を打ち出し切れていない企業も散見された」「かなり開示内容に幅があった」とのこと。

ステークホルダーからすると、これでは、他社と一律での比較ができないということになり、「使えない開示」と言えるでしょう。そこで脚光を浴びるのが、有価証券報告書における日本版S1・S2に準拠したサステナビリティ情報開示なのです。

第1回 JPX ISSBセミナーレジュメより

「グローバルな開示ベースライン」となるために、S1・S2が自体は、最低限の開示項目から成るフレームワークとなっています。そのためISSBは、各法域の規制当局がS1・S2準拠のルールを作成する場合には、開示項目を減らすことは極力避けるべきとしています。逆に、上乗せ・横出しはOK。

この方針は周知されているので、日本版S1・S2は、本家から大幅に異なることは想定できず、だからこそ、適用可能となる2024年1月1日以降、準拠した開示のトレーニングをしておきましょう、とご案内したのです。

なお、日本と異なり、海外のパブコメはガス抜きではありません。
S1・S2も、フィードバックを受けて、最終版ではドラフトから様々な修正が加えられています。

その最たるものが、SASBの扱いです。
SASBはIIRCと共にISSBの母体となった基準です。
S1・S2の基礎はSASBであると言っても良いでしょう。

なので、ドラフトでは、S1・S2に記載の無い項目については、SASBに準拠することとしていました。

ですが、SASBは元来、米国発祥の基準であることから、どうしても、欧州や日本など他の法域で使用するには都合の悪いことが多々あり、それを指摘するフィードバックが多かったとのこと。

この点を考慮して、最終版では「考慮しなければならない」と、一段軟らかい表現に修正したという経緯があります。

第1回 JPX ISSBセミナーレジュメより

しかしながら、S1・S2が目指す「その法域でも採用できること」を実現すべく、「SASB国際化プロジェクト」が進行中で、既に、コンサルテーションも終了したところ。これから精査され、最終版がリリースされるでしょう。

そのタイミングを待って、ISSBはSASBの義務化を行うと明言しています。

個人的には、SASBの産業別開示基準は「産業におけるサスティナビリティの財政的影響に関する企業と投資家を結びつける」という観点で作成されており、開示企業にとって、分かりやすく使いやすいものになっていると感じています。

第1回 JPX ISSBセミナーレジュメより

SASB基準は、実施入門書(日本語)が用意されています。活用しましょう。

第1回 JPX ISSBセミナーレジュメより

ということで、サステナビリティ情報開示の将来を見据えながら、いち早く着手し、ステークホルダーの信頼を勝ち取っていきましょう、というお話でした。

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