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CBAM in motion(4)

2023年10月より導入が事実上確定したEUの炭素国境調整措置(CBAM)について、EY新日本有限責任監査法人が開催したウェビナーの資料を用いながら、内容について見ています。

1回目では概略の説明をしまました。
2回目は、「輸出業務が変わる」ことをお伝えしました。
3回目は、「検証業務が変わる」ことについて考察しました。
4回目は、どのようなビジネスチャンスがあるか、考えて見たいと思います。

CBAM関連業務は、大きく分けて5つあると考えます。

1.CBAM対象品の特定およびアップデート
2.CBAM対象品の排出量の算定
3.CBAM対象品の排出量算定結果の検証
4.CBAM証書の購入と管理
5.EU当局とのコミュニケーション

この中で着目すべきは、1と2でしょう。

2回目でご案内したように、とにかく、自社の輸出品が対象となるか否かの特定は、難しい上に煩雑となるでしょう。

CNコードと突合するだけであれば、輸出担当だけでも対応できるかもしれません。しかし、同じコードに含まれる物品は多岐に亘るため、もしかすると、開発のメンバーなどとの共同作業となる可能性もあるでしょう。

EY Japan ウェビナーレジュメより

困ったことに「7616」は「Other articles of aluminiume」
「その他アルミニウム製品」なんてどうしましょう、ですよね。

ウェビナーでは、例として、鉄やアルミ製のねじやボルトが挙げられていましたが、こんな曖昧な区分ではどうしようもない。国内の法律と同じで、当局へ「お問合せ」の場面もあるでしょう。

ということで、まずは「1.CBAM対象品の特定およびアップデート」を解決するビジネスが期待できそうです。


次は、言わずもがな、排出量の算定です。

ご案内のように、2050年ゼロカーボンを目指す中、大企業はもちろん、中小においても、算定に着手し始めた企業は増えてきました。しかし、算定業務を担当している部署は、輸出業務担当部署とは殆ど無縁なのではないでしょうか?

加えて、あくまでも「自主的」に算定しているのが現状。法の求めに応じて行っているわけではありません。

もちろん、できる範囲内において基準に則った算定を行っていれば、検証を受け、「限定的保証」あるいは「合理的保証」を得ることも可能です。

ただ、これも、3回目でご案内したように、検証機関側も、ISOやGHGプロトコルなどの民間の定めた基準に基づいて検証を行っているだけです。会計監査のような厳しさはありません。

なお、CBAMは法律ですから、「基準」は明確にされるはずです。
個人的には、温対法における排出係数一覧のようなものが与えられるのではないかとは思っています。

なので、決められたことをきっちりやれば、よいはずです。
そんな人材が必要ですね。

これについては、環境省や財務省が検討している、人材育成プログラムが、一つの対策案ではあるでしょう。

とはいえ、レベルが高すぎたり、あるいは、十分な数の人材を速やかに育成できるかは未知数です。本格導入は27年からとはいえ、移行期間においても、報告はマストとなっています。とりあえず、23年10月以降に報告できるような準備を進めなければなりません。

ということで、次に必要となるのは、「2.CBAM対象品の排出量の算定」を解決できるビジネスではないかと、夢想します。


「3.CBAM対象品の排出量算定結果の検証」はどうでしょうか?

考慮すべきは、65認定を受けている検証機関が7つしかないということ。
その検証機関においても、業務を行うことのできる検証人の数が圧倒的に少ないという現実を直視しなければならないと思います。


その7つの検証機関に立ちはだかるのは、CBAMよりもGX-ETSにおける、基準年排出量の検証業務だと思います。

GXリーグ賛同企業は、2022年12月31日段階で658社。
2023年4月からの本格稼働に向け、GXリーグ参画企業を絶賛募集中です。

検証が求められる企業には条件があるため、参画企業全てからではないものの、相当数の検証依頼がなだれ込んでくると予想されます。

「CBAMなんて、やってられない」という声が聞こえてきそうです。

J-クレジットの場合は、当初はプロフィッタブルでしたが、年を追う毎に予算が絞られ、請け負う検証機関の数も減っていきました。

これを好機とみて、65認定を受ける機関も出てくるかもしれませんが、何とも言えないですね。繰り返し伝えているように、CBAMは法に基づくものですので、十分利益の出る検証費用が請求できるかもしれませんし。

算定のところでも言及しましたが、基準が明確となり、システマチックに処理ができるようになれば、チャンスはあるでしょう。

検証業務で一番苦労するのは、エビデンスのチェックです。

事務所で地道に伝票を計算して、計算に誤りの無いことを確認することが、骨が折れるのです。事前に提出してもらっていても、結局、現場で相当程度の時間をかけて行っているのが現実。

このような突合作業がシステムで行われ、人間でしかできない「監査」のみを担当すればよいというのであれば、話は別です。基準に曖昧なところがないのであれば、可能ではないでしょうか。期待したいです。

「4.CBAM証書の購入と管理」「5.EU当局とのコミュニケーション」については、従来の輸出業務において、取り扱い業務が増えたような感じではないかと思います。

何分、実務は全く知りませんので、誤りがあればご容赦下さい。
なので、ビジネスチャンスがあるか否かは、すみません、分かりません。

以上、ざっと、振り返って見ましたが、いかがでしょうか。
次回は、自分だったら?というアイデアを紹介したいと思います。

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