カーボン・クレジットの将来は明るい?
Environmental Financeが毎年実施している「Environmental Carbon Market Ranking Award」が今年も発表されました。
この賞は、環境市場における持続可能性や環境保護への取り組みを促進し、その業績を広く知らせるためのものとなっています。
馴染みがないかと思いますので、簡単に説明しておきますね。
今年のランキングは、エントリー数、投票数ともにこれまでで最多。22のカテゴリーで合計4,300票の投票があり、今年は新たに「ベスト・クレジット・イノベーション(非カーボン)」と「ベスト・プロジェクト・デベロッパー(生物多様性)」
の2つのカテゴリーが新たに加わったそうです。
さて、結果の方がこちらです。
個人的には、やはり「ブルーカーボン」。
「Best project developer」は「Ecosecurities」
同社は、森林部門でも受賞してます。
寡聞にも存じ上げなかったのですが、プロジェクト開発部門では3冠を達成したとのこと。京都議定書で市場メカニズムが創設されたことに併せての創業とのことなので、老舗なのですね。
「Best corporate offsetting programme」では「Microsoft」
Runner-upがいないので、唯一無二の存在といったところでしょうか。
ビルゲイツ氏のBTC(Breakthrough Technology Catalyst)についての言及はありませんので、純粋に同社が率先してoffsetting(BVCM)を推進していることが評価されたのでしょう。
「Best Carbon Exchange」は、完全ウェブベースのACX。
シンガポールベースですが、ドバイにも展開しており、VCM取引において存在感を示しています。こちらも、3冠達成だそうです。
現在は、米国、英国、カナダ、アイルランド在住の個人および法人が取引でき、郵送先住所、納税者番号及び銀行口座を持っていることが条件だとか。
将来的には、世界中で利用できるようにする予定だそうで、期待したいです。
さて、今回ご案内しようと思った理由は、ICVCMとVCMIが共同で「Best Initiative」を受賞したからです。
両イニシアチブは、ICVCMがCCPという、高品質なクレジットを「創る基準」、VCMIがCoP(Code of Practice)という、高品質なクレジットを「使う基準」を今年リリースしたことは、皆さんご案内の通り。
昨年、自主的炭素市場(VCM)は、その方法論とクレジットの信頼性と品質に対する反発、いわゆる「ウォッシュ批判」に直面。その結果、価格が下落し、クレジットの種類によっては需要を見つけることが困難になりました。
だからこそ、そんな中現れた「救世主」に賞が贈られたのでしょう。
今年のCOP28では、パリ協定6条2項のクレジットルールも明確になると思われますので、ボランタリー、コンパルソリー、いずれのクレジットも、新しい一歩を踏み出すことになるかと思います。
受賞した関係者の声が紹介されていますが、概して楽観的。
「いったん立ち止まって考えることも必要」といったところでしょうか。
私としても「過熱しすぎ」と思わないでもありませんでしたので、「低品質なクレジット」が淘汰される過程であると考えれば、悪い話でも無い、必要な試練である
と思っています。
現在、「クレジットを創りたい」という要望を複数受けているところですが、私としても、ウォッシュの誹りを受けない「高品質なクレジット」の創生に寄与していきたいと思います。
ハードルは高いですが、チャレンジしたいという皆さん、是非お声かけを。
一緒に頑張りましょう。