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ブルーカーボンのおさらい(1)

ブルーカーボンについては何度もご案内してきましたが、Jブルークレジットの試行事業が始まり、企業の取り組みが始まり、環境省・国交省(港湾局)・農水省(水産庁)及び自治体が推進し、それに伴いメディアでの露出も高まり、改めて問い合わせも多く受けるようになりました。

Jブルークレジットのエバンジェリスト(?!)として全国行脚している私としては嬉しい限りですが、だからこそ、これまた繰り返しご案内している「カーボン・クレジット」と同様、ウォッシュ批判されることのない「高品質なブルーカーボン」だけを創生する義務があると、襟を正しているところです。

そこで、「最近ブルーカーボンを知ったんだけど」という方もいらっしゃると思いますので、現状をご案内しつつ、おさらいをしたいと思います。

まず、ブルーカーボンという名称は、2009年10月のUNEPの報告書に初登場、吸収源対策の新しい選択肢として提示されました。

ブルーカーボン
海洋生物によって大気中の炭素が取り込まれ、海域で貯留された炭素

同じ吸収系では、森林吸収が浸透していたので、森林など陸域で貯留される炭素を「グリーンカーボン」、海域で貯留される炭素を「ブルーカーボン」と、区別して称呼するようになったのです。

ブルーカーボンは、主に藻場とマングローブから生まれます。

ブルーカーボンの特長としては、大きく2つ挙げることが出来ます。

1つ目は、グリーンより吸収量が多いことです。
グリーンが年間19億トンであるのに対し、ブルーは年間25億トンです。

国交省パンフレットより

ただ、藻場や内湾域が含まれる浅海域における吸収量は、約11億トンに減ってしまいますが、それでも、海域全体ではポテンシャルを有していることになります。

2つ目は、貯留できる期間が、断然長いことです。

グリーンはせいぜい数十年のところ、ブルーは数百〜数千年に及ぶのです。
温暖化対策は長期に亘るだけに、吸収量よりも断然メリットとなります。
これについては、少し説明が必要ですね。

前述したように、ブルーは、マングローブ、湿地、藻場などのような生態系において創生されます。

国交省パンフレットより

しかし、ブルーは、マングローブや海草自身では無く、ライフサイクルを終えた段階で土壌に蓄積されたり、海水中に溶出させたりした炭素のことを指します。

詳しく説明すると、以下の4種類に分類できます。

海草・海藻藻場のCO2貯留量 算定ガイドブックより

①堆積貯留
枯れた海草・海藻が藻場内の海底に堆積し、⻑期間貯留されるプロセス
②難分解貯留
枯れた海草・海藻、その細分化された破片が流出し、⻑期間CO2に戻らない難分解性の細片(粒子状)となり、藻場外の沿岸域に堆積して⻑期間貯留されるプロセス
③深海貯留
波浪などでちぎれた海草・海藻が流れ藻となって沖合に流出し、浮力を失って深海へ沈降し⻑期間貯留されるプロセス
④RDOC貯留
海草・海藻が放出する難分解性の溶存態有機炭素が⻑期 間にわたり海水中に貯留されるプロセス
難分解性溶存態有機炭素 (Refractory Dissolved Organic Carbon:RDOC)

海草・海藻藻場のCO2貯留量 算定ガイドブックより

ですので、③のように深海にまで落ちていって貯留された炭素は、海溝の奥底まで辿り着くこともある訳で、そうなってしまえば、何千年も大気中に出てくることはないでしょう。

他方、グリーンの方は、成長によって植物の体内に貯留された炭素です。
枯れてしまえば、好気性分解されますし、木材として利用されれば、最終的には焼却されて、大気中に放出されます。(カーボン・ニュートラルではありますが)

グリーンに対して、ブルーは大きな可能性を秘めていることが、お分かり頂けましたでしょうか。次回は、ブルーカーボンを取り巻く情勢について、ご説明したいと思います。

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