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ISO14068−1を深掘りしてみた(3)

2023年11月30日、「ISO14068−1 Carbon neutrality」がリリースされたことを受けて、皆さんが気になるポイントについて解説しています。

2回に亘ってご案内したところで、ポイントは、「ネットゼロ達成のためには、吸収除去系クレジットしか使用できない」ということでした。

ここで、「カーボンニュートラリティ」ではなく「ネットゼロ」と言っているのが曲者で、その心は、「カーボンニュートラリティ達成のためには吸収除去系クレジット以外も使用できる」ということなのです。

さらに混乱させてしまいましたか?

2回目でも説明しましたが、「ネットゼロ」と「カーボンニュートラリティ」は異なる概念であることに留意する必要があります。

いずれも、人為的な排出量と人為的な除去量が一定期間に亘ってバランスしている状態のことを指していますが、「一定期間」が「Early」なのか「Later」なのかによって異なるのです。

IS014068-1:2023より

カーボンニュートラリティについては、「Annex A Carbon neutrality pathway」で詳しく説明されています。

下図は、上記概念を説明したものです。

IS014068-1:2023より

排出量は「Unabated GHG emissions」と「GHG removals」の合計で表現され、「Carbon credits」を用いてオフセットを行った結果が「Net result」。

「unabated GHG emissions」の中に「Residual GHG emissions」が含まれており、「Carbon credits」の中に「Reduction credits(including avoidance credits)」と「Removal credits」が含まれています。

カーボンニュートラリティの経路は「Early phase」と「Later phase」の2つの段階があり、いずれの段階においても、「Net result」がゼロもしくはマイナスの場合に「Carbon neutrality」とみなされます。

2つの段階を簡単に説明すると、以下のようになります。

Early phase
計画にしたがって排出削減・除去強化を実施しているものの、削減できていない排出量(Unabated emissions)が残っており、その排出量をクレジット(種類を問わない)を用いてオフセットする段階

Later phase
排出削減・除去強化によって、どうしても削減できない排出量(Residual emissions)だけが残っており、その排出量を除去クレジット(Removal credits)を用いてオフセットする段階(オフセットせず、自助努力のみで達成している場合も含む)

IS014068-1:2023より筆者作成

「Early phase」では、削減余地がある「Unabated emissions」と削減余地のない「Residual emissions」からなる排出量が存在するものの、「Later phase」では「Residual emissions」しか存在しなくなっている。

そして、その「Residual emissions」のオフセットに使用できるものは、吸収除去系クレジット(Removal credits)のみであり、それにより「Net result」がゼロもしくはマイナスの場合のみ、「Net Zero」主張できるのです。

つまり、カーボンニュートラリティの中で、特定の状態がネットゼロなのです。

ISO14068−1で定義されるカーボンニュートラリティは、オフセットを認める立場だというのは、確かにその通りです。

しかし、「Early phase」においては、排出削減・除去強化に務め、「Later phase」において、「Residual emissions」に限って吸収除去系クレジットによるオフセットを認めるのは、UNのRace To Zero Campaignにおけるネットゼロの定義と同じなのです。

ということで、ISO14068−1:2023 Carbon neutralityをちょっと深掘りしてみましたが、いかがだったでしょうか。

この他にも、理解しておきたい内容もありますので、別途ご案内しますね。
なお、概要については、こちらを参照ください。

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