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EFRAGのアウトリーチ半端ない

EFRAG(European Financial Reporting Advisory Group)ご存知ですか?

欧州委員会の支援を受けて設立された民間組織で、欧州連合における財務報告基準の策定と承認に重要な役割を担っています。

EFRAGは欧州委員会の依頼を受けて、専門的な知見に基づき様々な法令のドラフトを作成します。欧州委員会はこれらのドラフトを参考にしつつ、最終的な法令化を行います。

CSRDにおける開示ルールである「ESRS」も、依頼を受けて作成。
欧州委員会は、提出案を一部修正の上、欧州議会及びEU理事会に法案提出。
暫定合意はされたものの、「修正」の程度が大きすぎるとして、批判を受けたりもしました。

とは言え、CSRD発効は秒読み段階となり、EFRAGとしても、周知徹底を図るべく、様々なガイダンスの準備に取りかかっており、noteでもご案内していたところです。

その段階で、ドラフトのコンサルテーション中であった、次の3つの「Implementaition Guidance(EFRAG IG 1 TO 3)」がようやくファイナライズ、公開されました。

EFRAG IG 1: Materiality Assessment
EFRAG IG 2: Value Chain
EFRAG IG 3: Detailed ESRS Datapoints and Accompanying Explanatory Note

内容を簡単に説明しておきますね、

IG1:Materiality Assessment Implementation Guidance
開示の要否判断に重要な2つの「Materiality」の概念(「Financial Materiality」と「Impact Materiality」)について、多くの事例を紹介しながら、どのように相互作用するかを説明。重要な影響、リスク、機会の開示に関する実践的な実施ガイダンスとなっているとのこと。FAQもあり。

IG2: Value Chain Implementation Guidance
重要性評価から方針・行動、評価基準や目標に至るまで、バリューチェーンに関する報告要件の概要を説明すると共に、サスティナビリティ情報開示におけるバウンダリーを明確化。FAQと、開示要件ごとのバリューチェーンへの影響をまとめた「バリューチェーンマップ」も含まれているとのこと。

IG3:Detailed ESRS Datapoints List
ESRSセット1の詳細要求事項全リストで、こちらはエクセルファイルです。基準ごとにシートが分かれており、要求事項(DR)の種類(例えば、定量的か定性的か)や、経過措置の対象かどうかなど の追加情報が含まれており、データギャップ分析やデータ収集に役立ちます。

なお、IG3については、解説がありますので、参照しながら利用されるのがよいかと思います。

また、EFRAGは「ESRS Q&Aプラットフォーム」というサイトも用意しています。こちらでは、頻繁にアップデートされており、最近のアップデートでは、解説がさらに44追加追加されていました。

これだけではありません。

報告に当たっての一般的なガイダンスに加え、次のような報告企業ごとのESRSの開発も進めています。

1.Sector Specific ESRS
2.LSME ESRS
3.VSME ESRS

まず、昨年リリースされたのは「Sector Agnostic ESRS」という位置づけで、「特定の産業セクターに限定されず、どのセクターでも適用できるESRS」というものでした。

ですが、セクター特有の事情があり、「Sector Agnostic」では都合が悪い場合もあるでしょう。なので、SBTiでもセクター別ガイドライン(SDA)を用意しているように、ESRSでもセクター別ESRS(1.Sector Specific ESRS)の開発を進めているわけです。

続いての「2.LSME ESRS」は「Listed Small and Medium-sized Enterprises」のことで、上場している中小企業向けのESRSのこと。

また「3.VSME  ESRS」は「Voluntary Small and Medium-sized Enterprises」のことで、自主的にESRSに基づいた開示をする中小企業向けのESRSのことです。

セクター別以上に、大企業と中小企業では事情が異なるでしょう。
それに対応した、ESRSを準備しているのです。

欧州委員会は、CSRDの円滑な導入を至上命題としており、EFRAGに対して、十二分の対策をするように指示を出しています。

依頼を受けたEFRAGは、このように「これでもか」という施策を打ち出しているというのが現状なのです。

ということで、EFRAGのESRS普及に当たっての取り組みを紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。

SSBJも、日本版S1・S2基準策定に向けて、特設サイトを用意するなど、報告企業及び利用者の声を採り挙げようと腐心していることは評価します。

ですが、これに安住せず、さらに深掘りすると共に、確定基準を公開した後も、コミュニケーションをとり続けてほしいものです。


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