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Global Stock Take(GST)の進捗

カーボン・クレジットの動向以外に注目していたのは、グローバル・ストックテイク(GST)の進捗でした。

そもそも「グローバル・ストックテイクとは何ぞや?」ですが、簡単に言うと「パリ協定の長期目標達成に向けた世界全体の進捗を評価する仕組み」です。

さらに具体的にいうと、締約国が定めている目標(NDC)に対する進捗状況を確認し、1.5℃目標に対して不十分であれば(まぁ、確実に不十分でしょう)、目標を引き上げていこうとする「野心度引き上げメカニズム」です。

GSTは、以下の3つのフェーズからなります。

フェーズ1.情報収集と準備
フェーズ2.技術的評価
フェーズ3.アウトプットの検討

第1回目のGSTは、COP26から始まり、COP28で終了します。
ですので、COP27では、「フェーズ2.技術的評価」のための技術対話が行われていましたが、 14 日無事終了したようです。

ダイアローグの閉会式で、国連気候変動事務局長のSimon Stiellは、ストックテイクは単なる技術的な活動以上のものであると強調しました。

グローバル・ストックテイクは、野心的な取り組みでです。また、説明責任を果たすために実施される、加速度的な取り組みの意味合いもあります。すべての締約国が約束を守っていることを確認し、次にどこに行くべきか、パリ協定の目標を達成するためにどれだけ迅速に行動を起こす必要があるかを知るためのプロセスなのです。

私も全く同感で、このような「野心度引き上げメカニズム」が無ければ、各国が立てた目標であるNDCなんて、まさしく「絵に描いた餅」です。

グローバル・ストックテイクにおいて、自国の取り組み状況が白日の下にさらされることによって振り返り、目標(=野心度)を引き上げざるを得ない状況に追いやられるのです。

この「技術対話」、具体的には、先週、政府代表団、オブザーバー、専門家が、パリ協定の目標達成に向けて集団で進んでいるところ、進んでいないところについて議論した模様。

これらの議論は、地球温暖化を1.5℃に抑えるというパリ協定の目標達成に向けて各国が野心を高めるために軌道修正するのに役立つ訳です。

参加者は、緩和、適応、実施手段(気候金融、技術移転、キャパビル)について、入手可能な最善の科学と評価を共有すると共に、気候変動に関する解決策を紹介、行動を起こす上で立ちはだかる障壁を明らかにしたとのこと。

このダイアログは、過去の行動を振り返ることが中心だが、より野心的な気候変動対策と支援を引き出すための前進的なモメンタムでもあります。

事務局長のSimon Stiellが閉会式で述べた言葉は、まさしくそのことを伝えています。

技術対話の重要な部分は、緩和、適応、資金、透明性、そしてプロセス外の人々の行動も含めて、行動の機会を特定することだです。私たちが次に進むべき道はどこなのか "を知るために、「私たちは今どのような状況にあるのか 」を知るのです

折しも、先月発表された国連の新しい気候変動報告書によると、各国が世界の温室効果ガス排出量のカーブを下向きに曲げているものの、今世紀末までに世界の気温上昇を1.5℃に抑えるには、こうした努力はまだ不十分であることが示されました。

そんな、2030年、2050年、2100年という将来を見渡したときの、「クリティカルポイント」となる時期に実施されている、第1回目のGST。

世界の気温上昇を1.5℃に抑えるというパリ協定の目標を達成するためには、2030年までに世界の排出量をほぼ半減させる必要があること。また、すでに発生している気候変動による影響にコミュニティが対処するためには、変革的な適応策も必要であること。

この「事実」を各国が再認識する、またとない「対話」となったでしょう。

技術対話の共同進行役は、今後数週間のうちに、COP27での議論を取りまとめた報告書を作成する予定とのことなので、発表がありましたらご紹介しますね。気長にお待ちください。

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