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クレジットで地球をもっと元気にしよう

「クレジットを創りたいんですけど」
この1年、何度このセリフを聞いたか分かりません。

2009年に、国内クレジット及びJ-VER(現在のJ-クレジット)が立ち上がった当初から関与してきた自分からすると「感慨もひとしお」なのですが、必ずしも喜ばしい状況とは言えません。

京都議定書において、削減目標を達成するための手段として、排出権取引が導入された頃、金融商品の位置づけとして、つまりマネーゲームの一形態として注目を浴びたこともありましたが、現在は、加えて、「ブロックチェーン」や「衛星モニタリング」などのツールの単なる活用方法としても捉えられているように思います。

「クレジット収益によりプロジェクトが継続し、温室効果ガスの削減が進み、最終的には持続可能な地球環境が実現出来る」という目的が蔑ろにされていると感じるからです。

また、クレジットの収益は地域に循環し、地域経済の活性化にも寄与しますが、売れなければ話になりません。特にJ-VERは自治体がプロジェクト主体となることが多かったところ、創れば売れると思っているところが多分にありました。なので、10年以上に亘って、共同で利活用を推進してきました。

もう1点、クレジットについて、一家言あります。
「クレジットのプライスが安い」という不満の声です。

J-クレジット制度について(データ集)より

「再エネクレジット」は、条件付きながらRE100で使用できるので、実質温対法の報告でしか活用できない「省エネクレジット」より、倍の価格になっています。
売り側からすると、このレベルでは不満ということらしいです。

ちなみに、J-クレジットでも森林吸収系は、5,000円~20,000円/tCO2で販売されているものもありますが、売れているとは限りません。
株式市場で、売値と買値が乖離して取引が成立していないという状態かもしれませんので、ご留意下さい。

ここで、世界に目を向けてみると、違った風景が広がっています。
こちらは、ACXというシンガポールにある、完全ウェブベースでの取引市場における価格一覧です。(2023年9月22日現在)

右側のGNで始まるクレジットは、森林吸収系のクレジットです。
アルファベットや数字が付されていますが、これは、ビンテージ(創生された期間)が異なる銘柄を示しています。ビンテージ毎に使用できる用途や対象が異なるので、価格も異なります。

左側のCETは、ICAOが設立しているCORSIAという、民間航空会社による市場メカニズムで活用できるクレジット(CORSIA適格クレジット)。RETは、J-クレジットでいうところの、再エネクレジット。SDGTは、SDGsの17のターゲットに資するプロジェクトによって生み出されたクレジットを表しています。

ご覧頂くと分かるかと思いますが、安い銘柄は1ドル/tCO2未満。高くても、15ドル/tCO2。1ドル150円としても、2,250円/tCO2に過ぎないのです。

ACXは、完全ウェブベースのためコストが安く、プライスが安めに出ているかもしれませんが、世界のクレジットのマーケットは、このプライスレンジなのです。

ちなみに、現在の値動きはというと、こんな感じ。
左側がCORSIA適格、右側が森林吸収のクレジットの代表とお考え下さい。

CARBON CREDITS.COMより

他方、義務化されたETS(Emission trading scheme)で使用できるクレジットの代表例は、EU-ETSのEUAですが、現在の値動きはこのようになっています。

CARBON CREDITS.COMより

2005年の開始直後から2023年6月までの、長期間の値動きはこちら。

ICAP Allowance Price Explorer

つまり、法的拘束力を持つ市場で使用できるクレジット(Compulsory credits)は高く、自主的に購入し、多様な用途に使用するクレジット(Voluntary credits)は安くなることが一般的。かつ、需給により変動するのです。

ここで私が言いたいのは、「日本のクレジットは安くはない」ということ。
さらに言うと、需給に因らず「日本のクレジットは高くできる」ということです。

どういうことかと言うと、「どのようなプロジェクトによって、どのような人たちによって、何のために生み出されたクレジットなのか、そのストーリーを伝えることにより、高いプライスでも売れる、買ってもらえる」のが、日本市場なのです。

海外では、基本的に大量に購入することが大前提です。質ではなく量。
他方、日本は、量ではなく質。ストーリーです。

個人的には、この特殊性が日本のクレジットマーケットの利点だと思っています。
ですが、この特殊性は世界でも通用するものと信じています。

ですので、クレジット・エバンジェリストとして、国内では、さらに、お客様に共感頂けるようなストーリーを提供して、適切なプライスで販売、地域活性化をさらに推進すると共に、海外のマーケットにも紹介していきたいと思っています。

このように、マネーゲームでなく、クレジット創生を目的化するのではなく、純粋に、地域と地球がもっと元気になることを目指すクレジット創生に、一緒にチャレンジしていきましょう。

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