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開示の目的は開示ではありません
ESG評価機関のMorningstar Sustainalyticsが、企業がネットゼロに向けたトランジション(移行)経路に合致しているかどうかを評価する新たな格付「低炭素移行格付:Low Carbon Transition Ratings (LCTRs)」の提供を開始するそうです。
「目標に向かって、ちゃんと削減できていますか?」ということをレイティングするという位置づけでしょう。
「サスティナリティクス」はサスティナビリティ周りでは影響力が大きいと思われるので、「またしてもアンケートが増えるのか」と頭を抱える担当者もいらっしゃるかもしれませんね。
さて、そのような悩ましい対応を一手に引き受ける担当者としては、非財務情報開示、特に気候変動に関しては、下記のような認識の方が多いのではないでしょうか
算定方法:GHGプロトコル
目標設定:SBTi
開示内容:ISSB(TCFD)
開示プラットフォーム:CDP
ですので、まずは「見える化」ということで、自社のスコープ1+2。着手済のところはスコープ3。取組が進んでいるところは、CDPのAリスト入りというステップにあるかと思います。
ですが、「見える化」の目的は、ホットスポットを特定し、優先順位をつけ、削減計画を立案、実行していくことにあります。
この点に鑑みると、上記基準に欠けているのは、評価・確認なんですね。
もちろんSBTiは認識済で、計画の進捗をまとめたレポートを出しています。
![](https://assets.st-note.com/img/1682585449689-2z2g4lIt5P.png?width=800)
そのなかで、2023年のCOP28までに「Progress Framework」の策定を完了させると謳っています。
これは、下記問題意識を踏まえたものです。
1.ボランタリーベースの開示のため、データが不十分な企業が多い
2.進捗報告の透明性、企業間の整合性、などに関する課題
3.方法論や制度に関する課題(特にスコープ3)
つまり、SBTiはイニシアチブのスコープを「Ambition(target-setting)」から「Performance(target-delivery)」へと拡大することを意図しているのです。
実は、同じ進捗の評価・確認のフレームワークとしては、「ACT(Assessing low-Carbon Transition)」という、フランス環境エネルギー管理庁(ADEME)とCDPが2015年のCOP21にて共同で設立したものがあります。
パリ協定の削減目標に沿った低炭素移行戦レームワークとして、セクター別の評価手法を開発してます。
私は、「目標設定→SBTi」「進捗評価→ACT」というイメージだったのですが、ACTの方がいまいち(というか全く?)浸透していないと感じており、サスティナリクスはビジネスチャンスと見たのかとも、邪推してます。
ちなみに、本年後半、サステナリティクスは「LCTRs」に裏付けされた新しいグローバル気候インデックスシリーズを導入するとしています。ルールが収束しようとする中、よく分からない格付やらインデックスやら、増やすのはどうかとは思います。
リリースの至る所に「投資家」「投資戦略」というワードが散りばめられていますが、これこそ「煽り」でないかと。「開示すればOK」「開示が目的」という風潮を増長しかねないと危惧してます。
ということで、個人的には、目標設定と進捗確認については、SBTiにしっかりと共通ルール、フレームワーク整備をして欲しいと思っています。
財務情報と非財務情報の垣根がなくなり、世界的な共通ルールの整備が進む中、中核をなす「指標と目標」というエビデンスのデファクトスタンダードルールが存在しないと、砂上の楼閣です。
今年は、ISSB、CSRD、CCP、CoP、続々と開示ルール、クレジットルールの正式リリースが続き、年末のCOP28を迎えます。
情報はキャッチアップしつつも、振り回されることなく、自社の脱炭素化計画と実施、そして透明性の高い開示を目指していきましょう。
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