SAFプレミアム共有プラットフォーム?(2)
成田空港をプラットフォームに、7社が合同で、SAFの環境価値を証書化、取引することを通じて航空輸送の脱炭素化を図る実証試験に着手することを発表したことを受けて、内容を簡単に紹介しております。
前回は、実証試験の概要をお届けしましたが、今回は、スキームを確認した上で、個人的な見解も交えてご案内しようと思います。
この実証試験は、プレスリリースでは次のようなポンチ絵で、取引スキームを紹介しています。
プラットフォームの左側に「航空会社」と「燃料供給事業者」が入れ替わった2つの流れがありますが、①はSAFの燃料としての価値のみの取引、②は燃料価値とScope3環境価値の取引の流れとなっていることに留意しましょう。
右側のプラットフォームへ提供されるのは、いずれもScope3環境価値のみですが、①は提供者が「燃料供給事業者」、②は「航空会社」となっています。
このように、「燃料供給事業者」は「航空会社」に対し、燃料価値のみ販売するか、両者セットで販売するかの2つの選択肢があるんですね。
他方、「航空会社」は、Scope3環境価値を自社で一旦負担した後、プラットフォームへ提供する(転売する)か、Scope3環境価値分だけディスカウントされたSAFを購入するか(「燃料供給事業者」はプラットフォームへ卸して収益をあげるから)の2つの選択肢があると言うことです。
このスキーム、取引するのが「証書」ですから、電力の非化石証書と似通った面があります。
電力取引では、小売電気事業者が、発電事業者から電力と環境価値(証書)を調達して需要家へ販売することにより、需要家は、再エネ電力を使用していることになり、自社の間接排出量を削減できます。
実証試験では、「フォワーダー」であるNXは、Scope3環境価値を購入することで、航空貨物輸送における排出量を控除し、「旅客」であるNAAはプラットフォーム運営・事業企画、従業員の出張に係る排出量を控除します。
ただ、決定的に異なるのは、現物と証書(Scope3環境価値)が分離しての調達ができないことにあります。
非化石証書は、どの小売電気事業者から購入した電力も控除できますが、Scope3環境価値は、実証試験に参加している「燃料供給事業者」によって成田空港に納品されたSAFについてのみ効力があると考えるからです。
現段階ではScope3環境価値の流通は想定されていないので、例えば、羽田便を利用した場合の排出量を、控除することはできないでしょう。
バーチャルPPAのように、電力と環境価値を全く別々に調達して、仮想的に「再エネ電力を使用している」と謳うことはNGみたいなイメージかな?
とはいえ、取引スキームの効果は大きいと思います。
販売者と購入者は、プラットフォームにてワンストップでScope3環境価値の取引ができます。相対取引が不要になるのです。また、販売者である「燃料供給事業者」は研究開発費、「航空会社」は燃料費について「予見可能性」が高まります。
あくまでも、「実証試験」なので、このスキームの有用性が確認できれば、全国大へ展開すれば良い話。この後の展開が、楽しみです。
ところで、プレスリリースにあった、次の表現が気になっています。
空港事情は全く存じ上げませんが、空港で給油を受ける場合は、ジェット燃料/アブガスといった種別毎に、一律料金なのではないのですか?
この表現からは、SAFの場合はブランドが複数あって、目的に合致したものを選択可能、のように思えます。
SAFには、技術や原料が複数あり、様々な企業が参入しています。
なので、就航地に馴染み深い企業や、地元の廃食油を原料としたものなど、個別具体的なSAFを指定して購入可能ということなのでしょうか。
その場合、単価も変わってくるのでしょうか。
とまぁ、色々とクエスチョンもありますが、「飛び恥」を解消してもらいたいと切に願うエアライン大好き人間としては、全面的に応援したいです。
なお、間違って理解している点があると思いますので、プレスリリースを元にした私なりの意見、ということで受け取って頂けたらと思います。
続報があれば、またご案内しますね。
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