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海運セクターガイドラインリリース(3)

海運セクターガイドラインの説明も3回目。
今回は、算定ツールの具体的な使用例をご案内したいと思います。
ガイダンスツールは、サイトからダウンロードしてお使い下さい。

ローンチウェビナー資料より
ローンチウェビナー資料より

なお、1回目と2回目は、こちらを参照下さい。

算定ツールはエクセルファイルで与えられ、運航する船舶の種類とサイズ、及び基準年と目標年、基準年の排出量、目標年の活動量予測を入力する必要があります。

船舶の種類

海上輸送は陸上輸送よりも、船舶の種類による排出量の差が大きいため、区分が細かくなっています。また、輸送するのが貨物のみなのか乗客のみなのか、その両方なのかも重要です。採用する算定方法も変わってきます。

それぞれの区分に、具体的にはどのような船舶が含まれるかについては、ガイドラインのAppendix 2にまとまっています。

算定を始める前に、船舶を利用した事業内容をブレイクダウンしておく必要があるかもしれません。

基準年と目標年については、2回目で説明していますので、参照下さい。

なお、基準年の排出量の算定に当たって使用するデータは、「可能な限り一次データ」であることとされています。まぁ、これができたら苦労はしないわけで、セカンドベストを考えるわけですが、ガイドラインでは、「GLEC Framework 」という算定ツールが紹介されています。


想定される使用者ごとに、見ていきましょう。
ウェビナーでは、以下の三者の例が紹介されました。

1.CONTAINER SHIPPER(荷主)
2.CONTAINER OPERATOR(船会社)
3.FERRY OPERATOR(フェリー会社)

1.CONTAINER SHIPPER

種類は「Container」、サイズは「Default」も選択できます。コンテナ船で運ばれることは分かっても、サイズなんて知らないでしょうからね。
目標年の活動量予測は、陸上輸送でいうところの「トンキロ」にあたる、「トン海里(tonne-nautical mile:t・nm)」を記入します。

そうすると、このように、総量削減目標及び原単位目標について、1.5℃目標に合致する目標及びパスが示されます。算定する方法論については、ガイダンスの「PART2:DECARBONIZATION PATHWAYS」に詳しく説明されていますので、参照されて下さい。

2.CONTAINER OPERATOR

船会社の場合でも、入力する項目は同じです。
ただ、種類はもちろん、サイズについても、自社保有なら分かるでしょう。
ということで、リストから当てはまるものを選択します。

このサイズは、TEU単位で選択するようになっています。

しかしながら、荷主と異なり、種類やサイズの異なる複数の船舶を有しているかと思います。ですので、同種類/サイズの船舶毎にブレイクダウンした、基準排出量及び目標年活動量を入力するシートを利用することになります。

3.FERRY OPERATOR

フェリー会社では、種類で「Ferry Passenger Only」を選択。
サイズでは、GT(グロストン 総トン数)で選択することに注意しましょう。
というのも、人の輸送を貨物の輸送のように扱えないからです。

スコープ3のカテゴリー5(出張)やカテゴリー6(通勤)を算定する場合、フェリー会社から入手した一次データを使うでしょうから、それを考慮した設計となっています。

例えば、フェリー会社Zが算定期間中に、10,000GTの総トン数の船で、延べ10,000nm運行すれば、100,000,000GT・nmです。

このとき、500人輸送していれば、5,000,000人・nmです。

会社Aが、フェリー会社Zを使って社員が、延べ200人、延べ1,000nm移動していれば、200,000 人・nm。

そうすると、5,000,000人・nm/200,000 人・nm=25

ですので、会社Aのフェリー会社Zにおける「活動量」は、
100,000,000GT・nm/25=4,000,000 GT・nm となります。

会社Aのフェリー会社Zの使用割合が一定と仮定すると、毎年の算定に当たっては、総GT・nm を提供してもらえば算定できることになります。

なお、ビジネスが成長して、目標年の排出量が多くなれば、原単位目標の削減率は「野心的」にならざるを得ません。もちろんですが。

ざっと紹介してきましたが、いかがでしょうか。
陸上輸送もそうですが、バリエーションが多岐に亘ることに加え、適切な原単位が得られないのが悩みの種。

バリューチェーン全体が同じ方法論、同じ算定アプリケーションを使用して、連携ができるようになれば、飛躍的に効率が上がりますよね。

そんな未来が来ることを期待しながら、まずは、地道な算定活動を行い、削減計画を立案、コツコツと実施していきたいと思います。

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