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素朴な疑問シリーズ〜排出権?排出量?

平成20年「福田ビジョン(覚えてます?)」に基づき、排出量取引の国内統合市場の試行的実施が開始されました。

1.試行排出量取引スキーム
2.国内クレジット
3.京都クレジット

この3つを「統合」した国内市場を設け、クレジットの売買をする構想。
カーボンプライシングの一翼として再び議論されている「排出量取引」市場が、国内で産声を上げたのです。

まぁ、「知る人ぞ知る」ではありますが、一応、新聞やメディアで報道されたので、記憶にある方もいらっしゃるかと。

ですが、新たな概念だったため、書いている側も十分に理解できておらず、使われている言葉も揺らいでいたように思います。

金融セクターは、新しい「金融商品」ができたと活気づき(ビットコインにたとえると言い過ぎ?電力や米の先物みたいなイメージでしょうか)、「排出権取引」と言っていたような。

日経は、一番ニュートラルな語感があるので「排出枠」としていたかと。

CO2量を取引するのだから「排出量」というのも間違いでは無さそう。
だけど、目に見えないものだから、イメージが湧かないよね。

いやいや、結局、排出してもいいという「権利」を売買するのだから、「排出権」取引じゃないの?

いろんな理由で、各社各様の表現が多かったように記憶しています。

ですので、はっきり言って正解は無いと思います。
ただ、あれから10年以上経過し、各国で排出量取引市場が開設される一方、クレジットの売買もなされるようになりました。ですので、現在の潮流を考えればよいのではないでしょうか。

一番参考になるのは、EU-ETS

このスキームでは、各国にEUA(European Union Allowance)という「ここまでは排出していいですよ」という「排出枠」を割り当てます。

それを超えそうになると、余る国から「排出枠」を買ってきて、埋め合わせをすることになります。この「排出枠」が設定されるのは「キャップ&トレード」、つまり「排出量取引市場」で売買される「商品」を「排出枠」と呼ぶのが妥当ではないでしょうか。

他方、「ベースライン&クレジット」では、ベースラインと比較して減らすことができた「CO2量」を取引するのだから、その場合の「商品」は「排出量」なのかなと。

なお、「削減量」でも良さそうですが、一般的に使用しないですね。
電力の「ネガワット」と同じで、概念し難いからでしょうか。
(排出量も見えませんけど)

個人的に一番妥当だと思うのは、英語をそのまま使用すること。
Emission Trading(ET)
これは、UNFCCCの京都メカニズムのひとつとして定義されたものですが、CO2量の取引に関しては広くこの表現が使われています。
「枠」「量」「権」どの単語を当てはめるかだけなので。

排出枠であれば「Allowance」でよいですよね。

ということで、単語に拘らず、「概念を理解して使っていけばよい」というのが持論です。具体的な施策推進に励んでいきましょう。


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