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カーボンプライシングとGX戦略(3)

「カーボンプライシング」と「GX戦略」を「脱炭素」というキーワードを絡めて、どのように活かしていくかを探るシリーズ、3回目です。

2回目では、「カーボンプライシング」の定義と「GX戦略」の内容について、簡単にご説明しました。「成長志向型カーボンプライシング」のロードマップもざっとご案内したところです。

それを踏まえた上で、どのように活用していけばよいのかを、一緒に考えて行きたいと思います。

中小企業の経営者であれば事業に直結しますし、大企業のサス担当であれば経営戦略に環境の切り口を持ち込む契機になります。はたまた、個人事業主であれば、取引先に新しい価値を提供できる可能性もあるでしょう。

さて、まずはもう一度、脱炭素に取り組む決意を固めて欲しいという思いで、こちらをheads-upしておきたいと思います。

どういうことかと言いますと、やるコストは「ある程度分かる」ということです。予見可能性があると言ってもよいでしょう。

何年に何が始まるのか、何をしなければならないのか、それにはいくらかかるのか、といったことです。

排出量削減をプレッジする企業の集まりであるGXリーグは、昨年度賛同していた企業が、続々と参画への手続きを進めています。要件を満たさなかったりして移行しない企業もあるでしょうが、日本企業の気質として、賛同していた679社の大多数は参画するのではないでしょうか。

また、昨年の22年9月から23年1月にかけて試行事業を実施したJPXは、23年10月から「カーボン・クレジット市場」の開設を発表しました。GX-ETSの本格稼働です。

25年度までの第1フェーズは試行的な位置づけで、参加はあくまでもボランタリーです。第2フェーズ、第3フェーズと進んでも「ボランタリー」なことには変わりはありませんが、第2フェーズからは、目標が未達の場合は、排出量の取引が可能となります。

GX-ETSの概要(GXリーグ設立準備事務局)より

ボランタリーながらも、参画すると決めたら、企業の規模にも拠りますが、排出量の算定及び削減目標の設定はマストです。第三者検証が必要となる場合もあります。

GX-ETSの概要(GXリーグ設立準備事務局)より

その上で、目標達成のために、削減計画にしたがって削減活動を実施していかなければなりません。もちろん、運用改善だけに留まらず、設備の更新や、現在では割高な再エネ電力の購入も選択肢に入るでしょう。

ですが、繰り返しになりますが、STEP1〜STEP3を実施するに当たって、およそのコストは見積もることが可能。

GX-ETSは2025年度、2030年度を目標年度とし、自主的な排出量を約束します。計画に設備更新を盛りこんだとして、導入する設備は、最先端とは言え実用化レベルにある技術を用いているもので、上市されているものからの選択かと思います。

エネマネなどのシステムも、既存技術からの選択であれば、見積依頼をかければ具体的な金額が出てくるでしょう。

それだけのコスとをかけて実施した果実として、得られるベネフィットも、これまた予測可能。ブランディングなどは、やり方次第で、上振れさせることも不可能では無い。

他方、やらなかったらどうでしょうか。

GXリーグに参画しないという選択肢を選んだとしても、2028年から導入が予定されている、「炭素賦課金」の影響は間接的に受けことになります。

2033年度から段階的に導入される、発電部門に対する有償オークションの影響も、電力料金という形で影響を及ぼすでしょう。

ここで補足しておくと、排出量取引は、排出枠を超えた分を調達して埋め合わせること。この排出枠は、当初は無償で割り当てられます。

これが、有償オークションでは、当初の排出枠も購入しないといけなくなるということです。目標を達成していても、「排出枠の購入」というコストが発生するのです。このコスト増を、発電事業者は電気料金で回収しようとするため、需要家も間接的に負担しなければならなくなるんですね。

さて、GXリーグに参画する道を選ぶとどうなるでしょう。
ボランタリーではありますが、サプライヤーなどのステークホルダーの要請で、参画せざるを得なくなる状況も、容易に予想できます。

参画していながら、削減活動をしない、脱炭素を行わないのであれば、先にご案内した「やるコスト」から、「STEP3 削減活動の実施」がなくなるだけです。

算定及び目標設定はしなければなりませんし、開示も必須。
それでいて、その見返りはと言うと….

GXリーグからのペナルティだけに留まりません。
排出量に応じた、税金や規則、与信や風評など、そのリスクの程度は全く読めないと言ってよいでしょう。

noteで繰り返しご案内してきたように、非財務情報の開示要請は高まるばかり。削減努力をしていないから開示できないというのは現実的では無いものの、努力が見られない報告書開示したところで、ステークホルダーはどのような判断をするでしょうか。

だからこそ、繰り返し、ご案内しているのです。

やるコスト」より「やらないリスク」を考えましょう

次回からは、「脱炭素」を推進する、「脱炭素」をお客様にご案内することで得られる「果実」について、ご案内していきたいと思います。

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