スコープ2算定 証書の活用方法は?
温対法の報告期限である7月末日を控え、データの収集・整理、算定に忙殺されている担当者の方も、多いのではないでしょうか。
CDPの方は質問書に大幅な変更があったため、例年の7月から9月へと締切が後ろ倒しされたとは言え、新しい質問に対応する負荷を考慮すると、一息つくどころか、逆にタイトなスケジュールになっているかと思います。
温対法は「法律」ですから、「対象となる排出活動」が限定されており「算定方法」と「排出係数」が詳らかにされています。(遵守しなければ罰則ですから当然ですよね)
他方、CDP等については、「自主的」な開示であり、GHGプロトコルというデファクトのルールがあるとは言え、多分に曖昧さが残っています。
グローバルには、ISSBのIFRS S1・S2とESRS、GRIといった開示基準間における「相互報告可能性(Interoperability)」を確保して、報告者の負荷を極力低減させようという取り組みが進められていますが、現場レベルでは、報告先毎に作成する手間が、依然として発生しているのが現実かと。
算定方法検討会で、そのギャップを埋めようと腐心しているので、今後に期待していますが、当面は、うまく立ち振る舞いたいですよね。
そんな、皆様のお役に立つことが信条のこのnote。
「当たり前」と思っていた内容について、最近受けた問い合わせがありましたので、ご紹介しておこうと思います。
答えは「イエス」
GHGプロトコルのスコープ2ガイダンスには、次のような説明があります。
ロケーション基準は「グリッド平均排出係数」となるので、ここに、証書が入り込む余地はありません。他方、マーケット基準では、「意図的に選択した電力からの排出量」が反映されるので、購入している電力メニューの排出係数を使用して算定することになります。
そして、「契約証書」には、エネルギー生産についての属性と一体となったものと、分離された属性訴求権の二種類があり、次のようなものがあると説明されています。
1が、質問者が意図している「非化石証書」、2はPPA、3は小売電気事業者が提供している電力メニューの排出係数、4はいわゆる「残余ミックス、残渣」の排出係数でしょう。
また、1は「CO2を排出していない」という環境価値を「kWh」という電力価値から分離したものなので「分離された属性訴求権」、それ以外は「エネルギー生産(kWhの価値)についての属性と一体となったもの」ですね。
これに関連した質問が、こちら。
GHGプロトコルでは、非化石証書に記載されている「kWh」を、購入した電力から直接控除します。他方、SHK制度は、非化石証書記載の「kWh」に全国平均排出係数をかけて算出したトン数を、スコープ2排出量から差し引きます。
このようなルールとなったのは、「調達する電気が何によって発電されたかにかかわらず排出量をゼロにできてしまうため、排出係数が高く安価な電力メニューの選択を助長することになりかねない」からだそうです。
また、SHK制度では送電ロスを含んだ係数(使用端)であるところ、GHGプロトコルでは含まない係数(発電端)という相違があります。(送電ロスはスコープ3のカテゴリー3)
環境省DBにおける、カテゴリー3の係数はIDEAを元に算出されているので、GHGプロトコルにしたがったものです。また、非化石証書は、生産時(発電時)にCO2を排出していないという価値ですので、送電ロスは含まれていません。
ですので、原単位としては、非化石証書記載の「kWh」を購入した電力から控除した値ではなく、購入した電力量「kWh」そのものを使用します。したがって、先の質問に対する答えは「削減にならない」となります。
非化石証書や再エネクレジットなどを購入し、自社のスコープ2排出量を削減しようという事業者が皆無であった以前では、上がってこなかった質問かと思います。
今後は、削減に寄与する様々なスキーム等が選択肢となってくるため、今までは考慮する必要がなかった論点が上がってくるでしょうね。
これからも、ひとつひとつ、基本に立ち戻って考え、ご案内していけたらと思っています。
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