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2023年のVCMを振り返ってみよう(1)

VCMの動向をチェックするのにお世話になっている「cCarbon」
新年を迎え、2023年をレビューする記事を公開してくれていました。

日本でもGX-ETSが始動するなど、カーボン・クレジット界隈が賑やかになり始めた年でもありましたよね。このレビューでは、Verra(VCS), Gold Standard(GS), American Carbon Registry(ACR), Climate Action Reserve(CAR)の4大メジャーのVCMのデータを集計しています。

それでは、一緒に見ていきましょう。

まずは、クレジットの償却量(無効化と呼ばれることもあります)。
コンプライアン・スマーケットはもちろん、ボランタリー・マーケットであっても、カーボン・クレジットの使用を主張するためには必須の手続きです。
これにより再利用不可となるため、この量が利用されたクレジット量となります。

CCarbon: Analysing the VCM Retirements boom in December 2023 より

支援をしている立場から、算定要望の高まりを感じておりますが、如実に実態を表していると思います。基本右肩上がり、2023年は記録的な量になっていますね。
3,136万tと、2022年の2,402万tと比較して、30%以上増加しています。
2023年はVCM元年だったと言っても間違いではないかと。

月毎の償却量を経年で比較したのがこちら。
一目見ただけで、2023年12月の無効化量が特出しているのが分かります。

通常、企業は年間目標達成のために大量のクレジットを償却することは想定内ですが、これほどの数字は想定外。何が要因なのでしょうか。

CCarbon: Analysing the VCM Retirements boom in December 2023 より

それを探るため、方法論ごとにブレイクダウンしたのがこちら。
概ね、REDD+とRenewable Energyが大半を占めていることが分かります。

12月に着目すると、REDD+が約40%とRenewable Energyの約20%の倍になっており、2023年12月の償却量の増大はREDD+が牽引していたようです。

CCarbon: Analysing the VCM Retirements boom in December 2023 より

VCMの高まりに併せてウォッシュ批判も高まり、特に矢面に立っていたのがREDD+であることを想起すると、かなり意外と言わざるをえません。しかし、「Data don't lie.」それだけの需要があったと言うことでしょう。

言い換えれば、ウォッシュ批判に晒されないような「高品質なクレジット」が創生されれば、さらに利用したいとする企業も多いことでしょう。REDD+に限らず、自然由来のクレジットを活用していこうとしている自分にとっては、非常に頼もしい結果です。

続いて、クレジット発行主体による内訳がこちら。
4大クレジットとはいえ、ほとんどVCSの一強という様相を呈しています。

Verraは、複数のクレジット・スキームを持っていますが、このグラフでは、CCB(Climate, Community & Biodiversity Standards)を区別しています。

CCB基準は、排出削減または吸収除去プロジェクトが、地域社会および生物多様性にも肯定的な影響を及ぼすことを保証するために設計されていることから、CCB認証を取得したプロジェクトは、気候変動対策だけでなく、地域社会の支援と生物多様性の保全にも貢献していることが認められます。

CCarbon: Analysing the VCM Retirements boom in December 2023 より

そのCCBクレジットが、2023年12月償却量の52.3%を占めていたことから、特出した償却量の正体は、CCBだったということが分かりました。この傾向が2024年も続くか否かは、スキームオーナーのウォッシュ批判に耐える規格作りにかかっていると言えそうです。需要はあるわけですから。

作り手側の分析はこれくらいにして、使い手側を見てみましょう。
セクター別の償却量がこちらです。

案の定、オイル・ガスが61.1%でダントツ。次いで、環境・持続可能性セクター、自動車メーカー、少し離れて化学、サービスと続きます。

CCarbon: Analysing the VCM Retirements boom in December 2023 より

償却量のトップ5がこちらです。

シェルが全体の58.6%で圧倒的。オイル・ガスセクターの償却量では96%となっています。2位はAUDI。AUDIはフォルクスワーゲンに次いで、自動車セクターで2番目に多い排出量となっています。

CCarbon: Analysing the VCM Retirements boom in December 2023 より

cCarbonは、シェルとAUDIについて、償却したクレジットの方法論別ブレイクダウンも紹介しています。

シェルは、9月にカーボン・オフセットへの投資計画を廃止すると発表して市場を驚かせましたが、ジャンクでなく、高品質なクレジットに移行するという意向だったとのこと。このデータを見ても、よく分かりますね。

シェルはこのように、CCBクレジットの活用がメインで、主に土壌ベースの除去系クレジットだったと、cCarbonは伝えています。総じて、Verraからのクレジットを利用しているようです。

CCarbon: Analysing the VCM Retirements boom in December 2023 より

AUDIのブレイクダウンがこちらです。
CCBも購入しているものの、REDD+の方が多いことから、シェルと異なり、回避系クレジットをメインに捉えているものと考えられます。

CCarbon: Analysing the VCM Retirements boom in December 2023 より

ということで、2023年のVCM動向を、償却量(利用量)を中心に見てきました。
次回は、クレジットの種類と発行量について、見ていきたいと思います。

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