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CCSとCCUのSHK制度での立ち位置

以前のnoteで、SHK制度における排出量の報告内容について議論がなされているとご案内しました。担当以外には「?」のような内容なので、分かりやすく説明したつもりですが、いかがだったでしょうか。

地球温暖化に対する国際的な取り組みや技術開発は、日進月歩、朝令暮改の世界なので、致し方ないところではありますが、致し方ないものはまだまだあります。

今回ご紹介する「CCS:Carbon Capture and Storage」と「CCU:Carbon Capture and Utilization」もその一つ。(CCUSとまとめることもありますね)

CCU:「Carbon Capture and Utilization(炭素捕捉と利用)」
排出された二酸化炭素を捕捉し、その後、化学製品、燃料、建材などの製造に再利用すること。CCUは、二酸化炭素を有用な製品に変換することで、その排出を削減または中和する方法として注目されている。

CCS:「Carbon Capture and Storage(炭素捕捉と貯蔵)」
排出された二酸化炭素を捕捉し、主に地下の貯蔵施設や地層に貯留すること。CCSは、大量の二酸化炭素を大気から除去することで、気候変動の影響を緩和する手段として考えられている。貯留期間や安全性が問題視されることもある。

この、CCS及びCCUについても、検討会で議論がなされています。
何が問題なのでしょうか。

前回ご案内した「調整後排出係数」は、「クレジット」という新しい概念が現れたために、新しい課題が生まれたものでしたが、CCUSとは、今まで排出する一方だった二酸化炭素を回収して貯留したり、利用したり、という新しい技術開発がなされたために生まれたものと言えます。

よくある「規制/法制が技術開発に追い付かない」ってタイプの課題です。

これまで、SHK制度では、バイオマス燃料の使用については、現在はゼロカウントとされています。成長段階で吸収するため、カーボンニュートラルとされるからです。(省エネ法は、エネルギーの定義が変更になった関係上、バイオマス燃料も「非化石燃料」として算定することになっていますが)

では、回収して固定した場合(CCS)、あるいは回収して利用した場合(CCU)はどのように考えたらよいのか、が話し合われているのです。

個人的な見解を述べさせてもらうと、CCSは貯留できる期間にも因ると思いますが、一定条件下で「吸収源(Carbon Sink)」とみなすこともできると考えます。

他方、CCUは結局「利用」する、つまり回収しても、結局燃焼して排出するので、「排出源(Carbon Source)」であることには変わりありません。ただ、それでも、悩みは続くのです。

排出されたCO2を回収して、メタネーションにより製造したメタン(e-methane)は、利用(燃焼)すれば排出源となる一方、原料として「利用」し、化成品を製造すれば「固定」したことになり、吸収源になるのではないか。

いやいや、そのように過程を経て製造されたプラスチックも、廃棄段階では排出されるだろう。とても「固定」とは言えない。

では、今はできなくとも、完全リサイクルが実現すれば、やはり、吸収源だ。

吸収源か排出源かは、ことほど左様に悩ましいのです。

さらに悩ましいのは、「回収」のベネフィットを、排出する側(原排出者)が享受するのか、利用する側が享受するのか、という課題も残っている点。これは、LCAでも、常に問題視され、議論になるところではあります。

こちらは、算定における「ダブルカウント回避」という原則につながります。

この議論は、国内法と国際的な枠組みとの整合性を図るという、さらに大きな課題の一つになっていることに留意する必要があります。

ということで、検討会では、以下の2点の視点から検討を進めるとしています。

・排出量の回収やカーボンリサイクル製品を適切に評価した上で、その評価をSHK制度に反映させる必要があるのではないか
・多様なビジネス形態を想定して、排出量を計上する者を一律に原排出者又は利用者のどちらか一方に固定するのではなく、柔軟に対応できる算定ルールにする必要があるのではないか

スケジュールとしては、24年度にかけて議論を行い、25年度に改正法施行、26年度報告から改正内容を反映させるようです。

第7回 温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度における算定方法検討会レジュメより

算定担当の方にしてみれば、海外だけでなく国内もウォッチングしておかなければならず、いい加減にしてくれ、というところでしょう。

大丈夫です。こちらのnoteでキャッチアップしていきます。
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