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各国CPにおけるクレジットの扱いについて(1)

先日、世界銀行がリリースした「State and Trends of Carbon Pricing 2024」によると、全世界において、75の炭素税及び排出権取引(ETS)が実運用されており、過去12ヶ月で2国・地域増加しているそうです。

State and Trends of Carbon Pricing 2024(World Bank)より

日本では「地球温暖化対策税」が相当しますが、燃料の供給段階で課税されるため、直截的には燃料を供給する事業者が納税義務を負います。

最終的なエンドユーザーには、燃料価格に税が転嫁される形になるのですが、過程が不明瞭ですし、転嫁できていなかったりもするでしょうから、「炭素税なんて負担してないよ」と思われる方もいらっしゃるでしょうね。

東京都及び埼玉県は、それぞれ、2010年、2011年に義務的な排出量取引制度が始まっていますので、対象事業者にとっては、馴染み深いでしょう。

私も、当時、都の制度の検証人資格を取得するために、主管する環境局の講習を受講し、試験を受けたものです。検証できる区分毎に取得する必要があったことに加え、大学受験バリの「落とす」ための試験だった(?)ので、九州から、何度も「受験」に通ったことが思い出されます(笑)

この時つくづく感じたのが「コストがかかるものだ」ということ。

制度設計から組織体制、資格制度、事務局運営、マネジメントシステム….etc
職員だけでは手に負えませんから、外部のシンクタンクなども採用しなければなりません。

なので、政策コストと削減量が見合う「大規模排出事業者」については「排出量取引」、個々の削減量は少なくとも、対象が多岐に亘る場合には「炭素税」という、2本立ての施策を実施することが一般的です。

炭素税(GX戦略では「炭素賦課金」としていますが)は、税率さえ決めてしまえば、徴収自体は既存スキームに乗っかりますので、政策コストは比較的安価にすみますから。

今回考えたいのは、排出量取引制度(ETS)で使用できる「排出量」です。削減目標を達成できない場合に調達して、達成したことにする手段です。

Cap and Tradeでは、「排出分の排出許可証(排出権/券)」を期末に持っていることが義務であり、総排出可能分(Cap)分の排出権(allowance)しか発行されないところ、売買(Trade)は可能ですので、本来は「排出権取引」及び「排出権」が正しい表現です。

しかし、「排出枠(あるいは排出量)」という言い方の方が一般的かと思うので(そもそも「排出枠」自体一般的でないカモですが)、それを議論するのが趣旨でないので、止めておきます(^_^;)

さて、このように、取引できる排出枠は、それぞれの制度が無償で割り当てることもあれば有償で割り当てることもありますが、目標未達の場合は、排出枠を有償で購入することになります。(でなければペナルティ)

で、取引できる排出枠は、制度オーナーが決めることができ、一般的には、当初割り当てていた割当量(排出枠)です。前述したように、全体量は一定ですので、当初計画していた排出総量は増えません。これが、ETSの利点。

ところが、景気がよくなったりして生産量が増えたりすれば、削減努力を行っても排出量が増えてしまうこともあるでしょう。ETS参加企業がみんな未達となれば、市場に取引できる余剰の排出枠は出てきません。

あるいは、余剰があっても、将来のために留保しておきたい企業もあるかもしれませんよね。

そんな時の手段として、当初割り当てられていた排出枠以外にも使用できる排出枠、クレジットを予め認めているETSが多いです。EU-ETSのMSRのように、市場安定化のスキームを有しているETSもあります。

それでは、どんなクレジットが使えるのか、気になりますよね。
一般的に、運営主体別に見ると、次のように分類されます。

カーボン・クレジット・レポートより

現在、UNFCCCにおける削減スキームは、京都議定書からパリ協定に移行しています。京都メカニズムに基づくクレジットは、CDMやJIでしたが、パリ協定では、6条4項に基づくクレジット(6.4ERs)となっています。

ですので、上図の「国連主導」には、6.4ERsも含まれます。(京都議定書の市場メカニズムのように、クレジットに名称が与えられておらず、便宜上このような表現をしています)

また、ETSはEU-ETSのように複数の国で実施されるものと、CN-ETSやNZ-ETSのように自国内で実施されるもの、東京都排出量取引制度のように自治体・州・地域レベルで実施されるもの、様々あります。

したがって、上図における「国内制度」には、そのようなそれぞれのETS内で使用できるクレジットも含まれるとお考えください。

これを踏まえた上で、使用できるクレジットは何か、の問いにお答えすると、「二国間」と「国内制度」において使用できるクレジットが基本。

ですが、各国が「特徴」を出しているところもあり、それらを含めて、次回ご案内したいと思います。

どうぞ、お付き合いください。

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