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非化石価値取引結果 23年度第4回

23年度4回目(最終回)となる非化石価値取引市場の取引結果が、5月24日までに全て出揃いました。(約定日は、非FIT(再エネ指定無し)、非FIT(再エネ指定)、FITがそれぞれ、22日、23日、24日)

取引結果が公表される度にご案内しています。
前回の結果は、こちらを参照下さい。

まずは、約定量から見ていきましょう。
FITは継続的な需要があるところ、非FITは前回々喪失した需要が戻らず。
FITのスケールに合わせると、グラフにすら現れてきません(^_^;)

約定量

「非化石価値」を扱うこの市場ですが、取り扱う「証書」によって、「再エネ価値取引市場」と「高度化法義務達成市場」の2つに区分されています。既にご案内済みですが、簡単に説明しておきますね。

前者は、小売電力事業者が調整後排出量を算定するために使用する「再エネ価値」。22年度第3回目からは、小売電気事業者だけでなく、需要家や代行事業者も入札できるようになりました。

後者は、高度化法の義務を達成するために使用する「非化石価値」です。法が求める非化石電源(再生可能エネルギー、原子力)比率の中間目標に達していない小売電気事業者は、この市場で「非FIT証書」を調達することで義務量を達成できます。

電力・ガス取引監視等委員会 プレスリリースより

ですので、非FIT証書は発電事業者及び小売電気事業者しか買い手がいないので、その事情を探ると、真実が見えてきます。

実は、第1回目の入札が行われた後の昨年9月に、経産省が中間目標の対象事業者に昨年9月にアンケートを行っており、それによると、2023年度の高度化法義務を達成するために第2回から4回で調達する予定量は130億kWhだったとのこと。

で、実際の調達量は、再エネ指定・指定なし併せて、第2回目(23年11月)が7,666万1,539kWh、第3回目(24年2月)が11億5,712万8,678kWh、合計12億3,379万217kWh。

第3回目の実績は、非FIT証書の売入札総量が52億9,931万4,315kWhであることを考慮すると、残り120億kWh弱が調達されると逼迫する恐れがあるわけです。

それで、蓋を開けてみてどうだったか?

懸案の非FIT証書の売入札総量は、第3回目よりもさらに14億kWh少ない、38億9,200万5,709kWh。

売入札総量

ですが、幸い(?)非FIT証書の買入札総量は、何と1億7,097万7,150kWh。
前回は10億kWhを超えていましたから、「需要消失」と言ってよいですね。

買入札総量

「大部分の小売電気事業者が、事前に相対取引で調達していたようだ。」
市場関係者はこのように見ているようです。どういうことか?

排出量削減の確実な手段は、電力の再エネ化です。
手っ取り早いやり方としては、自社の敷地内に自前で太陽光発電を行えばよいのですが、なかなかそう簡単にはいきません。

なので、再エネ調達手段として普及し始めているのが「PPA(Power Purchase Agreement)」です。それも、オフサイトPPAと言われるタイプ。

コーポレートPPA 日本の最新動向 2024年度版(自然エネルギー財団)より 著者追記

オフサイトPPAでは、電源と需要家を特定して供給するため、電力と環境価値は一対一で取引されることになるのです。これにより目標を達成できているので、敢えて、市場で調達する必要が無いということになります。

ちなみに、FIT証書については、排出係数の低い電力に対する安定した需要の高まりによって、小売電気事業者の調達意欲も高値安定という感じ。

このように、FIT証書の約定最高価格と最低価格ですが、第2回は0.5円/kWh、第3回は0.6円kWhと若干低迷していたところ、今回は1.0円/kWh台を復活しています。

約定最高・最低価格

なお、約定平均価格については、FIT、非FITいずれも、それぞれ最低価格の0.4円、0.6円に張り付いています。(FIT証書は0.41円/kWhですが)この傾向は、前回と変わらずです。

約定平均価格

分析はこれくらいにして、毎回ご案内しているデータです。

まずは、落札率です。
最初は、売入札量に対する割合。

落札率(約定量/売入札量)

FIT証書は前回の10%から8%へと減少していますが、売が旺盛なのは変わりません。

続いて、買入札量に対する割合です。

落札率(約定量/買入札量)

こちらは、どの証書も100%が並びます。
非FITは買い手がいない一方、FITは売り手が多すぎるという現実です。

JEPXは入札会員数及び約定会員数はこちら。

約定会員数

小売電気事業に加え、需要家や仲介業者も購入できるようになった22年度第3回目(紺色)から単調増加していたFIT入札会員数ですが、今回は24者減。
維持コストを考慮すれば、仲介業者を利用するのも選択肢ですしね。

なお、前回同様、入札会員数と約定会員数は、ほぼ同数でした。

ということで、23年度最後の取引結果をご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。

再エネ電力の調達については、証書だけでなく、J-クレ(再エネ)もあり、その取引所も徐々に増えてきました。

今後、この入札制度がどのように変遷していくのか。
見守っていきたいと思います。

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