クレジットの十全性とは?
打合せの中で不意に受けた質問に、一瞬戸惑い、我に返りました。
「易しい言葉で」「誰にでも分かるように」と言いながら、結局、受け手に頼り切った説明を行っていたなと。
ですので、ざっくりで恐縮ですが、説明をしておきたいと思います。
まずは、ITMOs(Internationally Transferred Mitigation Outcomes)から。
そもそも、これ自体が「クレジット」ではなく、「クレジットの総称」です。
例えば、次のようなクレジットが含まれます。
ITMOsを活用する仕組みが、パリ協定6条2項なのですが、このルール作りが昨年のCOP27から始まったことで、大きく動き出しました。
とはいえ、クレジットを記録・追跡するシステムの仕様や審査のガイドライン、報告様式は決まったものの、途上国や島嶼国の特別事情の考慮や機密情報の審査様式、キャパビル体制などは今年のCOP28以降の課題事項として残っています。
京都議定書第一約束期間におけるCDMについても、COP7のマラケシュ合意(Marrakech Accords)で運用ルールが決定してから、事業者が安心してプロジェクトに着手し始めましたので、その意味でも、今年のCOP28は注目です。
次に、クレジットの質、難しく言うと「自主的炭素市場における十全性」となってしまうのですが、これは、供給-需要-市場の3つの視点で捉える必要があります。
つまり、クレジットの質は、作る側-売る側-使う側、全てについてウォッシュを排除する明確なルールが存在して初めて担保されるということです。
これを見ると、ICVCMは「供給」サイドに記載されていますよね。
ICVCM(the Integrity Coucil for the Voluntary Carbon Market:自主的炭素市場十全性評議会)とは、マーク・カーニー前イングランド銀行総裁、前金融安定化理事会議長、前カナダ銀行総裁によって2021年9月に設立された、自主的炭素市場の拡大に関するタスクフォース(RSVCM)が衣替えしたもの。
ICVCMがリリースした「CCPs:Core Carbon Principles」はまさに、高品質なクレジット制度が備えておくべき「10原則」をまとめたものです。
noteでも、紹介しています。
ICVCMは、プログラムレベル(CCP-Eligible)及びカテゴリーレベル(CCP-Approved)での認証申請手続きを開始しており、来年以降、認証を受けたクレジットが登場してくるでしょう。
では、ICROA(International )とは何か?
国際排出量取引協会(ICROA:International Carbon Reduction and Offset Association)は、国際的な排出量取引市場の健全な発展と拡大を目的として、2004年に設立された非営利団体です。
なので、排出量取引に関するガイドラインや基準の策定などを通じて、排出量取引市場の透明性や信頼性の向上に努めると共に、自主的な排出量取引市場の促進にも取り組んでいます。
ICROAの基準を、VCSを始めとする多くのボランタリークレジットが取り入れていることから、「クレジットの質」とみなしても間違いではありません。
両者の関係で言うと、CCPsは、クレジットを生み出す体制についての原則であるのに対し、ICROAは、生み出されるクレジットが有すべき要件を規定であると理解してもよいかもです。
CCPs認証において、ICVCMはプログラムレベルの認証のみを行い、CCP-Eligibleとなったクレジット制度運営主体が、各カテゴリー毎の認証を行う形を取るのも、上記を考えると納得かと思います。
ちなみに、「需要」サイドに記載されている「VCMI」は、使う側のルール「Claims Code of Prictice」の策定を行っており、noteでもご案内済み。
COP28開催中の23年11月28日に、追加版がリリース、完全版となる予定。
ということで、できるだけ分かりやすく〜とご説明したつもりではありますが、「全然分からん」という状態だとは思います。
リクエストがあれば、いくらでもチャレンジします。
折に触れ、少しづつご案内していきますので、温かく見守って頂ければ幸いです。
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