ICAPが設立15周年
昨年2022年、ICAP(International Carbon Action Partnership)が、めでたく設立15周年を迎えたそうです。
ICAP が設立された 2007 年は、世界のETSのモデルとなったEU-ETSは立ち上がったばかり(設立は2005年)。トランプ政権がパリ協定から離脱を宣言する中で「We Are Still In」運動を立ち上げたカリフォルニア州も、2020 年のGHG排出目標を達成するためのオプションを評価している最中。
そんな、ETS黎明期に設立されたICAP。初期署名メンバーは19の国・地域だったところ、現在は33のメンバーと7のオブアーバーが参加するパートナーシップに成長。先進的取組であるが故に情報が少なかったところ、互いに情報を共有できる唯一のプラットフォームとしての役割を果たしてきました。
日本はメンバーではありませんが、独自の排出量取引制度を有する東京都は2009年に参加しています。政府を出し抜くことを信条としている東京都、さすがです。
2017年には、シンポジウムを開催しました。
設立15周年にあたり、お祝いの言葉を寄せています。
2007 年以来、EU-ETSを先生にして、世界中で急増してきたことは皆さんもご承知でしょう。ほんの一握りから、既にオペレーションされているもの、検討段階、開発段階のものまで含めると、ほぼ50に達しています。
しかしながら、各ETSはそれぞれの国・地域の事情を反映して、個別具体的な設計となっており、互いのシステムの利点を取り込んでブラッシュアップするには、大きな壁が存在します。世界的レベルの習熟値が活用しづらいという、課題がありました。
さらに、2050年ゼロカーボンがCOP26によって共通認識となった今、ETSを始めとするカーボンプライシングも、多種多様なシステムが乱立し始めています。高品質なクレジットの条件や、使用方法、開示方法の統一も進んでいますが、数年は混沌とした状態が続くと思っています。
このような時期だからこそ、ICAPは、各ETSシステムの状態と設計を一貫して追跡すると共に、ポリシーと実装の問題について洞察に満ちたタイムリーな調査、ETSを開発している国・地域へのキャパビル実施、経験を共有するためのプラットフォーム作成に注力しているといいます。
GHG排出量算定支援をしていると、担当の皆さんが、社内で非常に孤立した立場にあることがよく分かります。1人か2人での孤独な作業で、業務の重要性を理解してもらえない。情報交換する相手もいない。
コンサルタントとして、直接的な支援だけでなく、互いに結びつけるコミュニケーション手段の提供もできればと思っているところです
このICAPですが、ETSに関わる信頼できるデータの入手先であることが、最も嬉しい利点です。これまでも、ご紹介してきました。
カーボンプライシングが脚光を浴びるようになって、各所から同様なデータサイトが現れてきましたが、はっきり言って、信頼性や一貫性において疑問を抱かずにはいられないサイトも散見される中、老舗のサイトは頼もしい。堂々と出典を明示できます。
お奨めは、ETSマップとAllowance Price Explorerです。
そして、毎年公表される、「ICAP Status Report」
先のnoteの「元ネタ」です(笑)
さて、2009年から、主に国内のクレジット(J-クレジット、JVETS、試行的排出量取引制度、ASSET/SHIFT事業)の創生や利活用に携わり、EU-ETSの動向をウォッチングしていた身からすると、この1、2年でETSのシステム及び目的が大きく変わってきたと感じています。
現在ETSを検討している国・地域の中で、EU、カリフォルニア、ケベック、ニュージーランド、韓国など、システムの最初の波のような「伝統的な」Cap and Tradeを設計している国はほとんどありません。
主に開発途上国で設計および実装されている次世代のETS は、原単位ベースの「Cap」などの代替設計要素を特徴とするか、さまざまなメカニズムのハイブリッドになっています。
本来の「Cap」ではないからこそ、独自の状況で目標を達成するのに役立つ、試行錯誤され信頼できる気候政策ツールになるように慎重に作成する必要があります。ですが、世界はますます複雑化しており、ETS はこの複雑さに対応できる柔軟性を備えていると信じたいですね。
加えて、炭素境界調整メカニズムであるCBAMに関する EU の提案は、より多様化したETS やその他の炭素価格設定手段にも大きな刺激を与えていくことは確実でしょう。
深刻の度合いが深まるエネルギー逼迫の折り、COP27において、再エネシフトが後退するどころか、加速しようというコンセンサスが得られたことも力強い。(国内のメディアに接していると実感できませんが)
2023年は、果たしてどのような一年になるのでしょうか。
希望的観測の元、ウォッチしていきたいと思います。
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