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SHK制度令和6年度報告からの変更点

環境省は、令和4年1月から12月まで、算定方法の見直しについて「算定方法検討会」で議論を行い、令和4年12月中間取りまとめを発表しました。このときは、2回に分けてご案内しました。

これを踏まえた法改正が令和5年4月1日に行われており、令和6年度報告(令和5年度実績の報告)から適用されます。

第5回資料より

中間取りまとめには、下記7点の項目が掲載されていました。

1.算定対象活動について
2.排出係数について
3.電気の使用に伴う排出量の算定方法について
4.ガス事業者別排出係数の導入について
5.証書及びカーボン・クレジットの扱いについて
6.廃棄物の原燃料使用の扱いについて
7.GHGプロトコルと整合した算定への換算について

実際には、7を除いた6項目について盛り込んだ変更がなされているようです。

1.算定対象活動・排出係数・地球温暖化係数の見直し
2.廃棄物の原燃料使用の位置づけの変更
3.電気及び熱に係る証書の使用の上限の設定
4.都市ガス及び熱の事業者別係数の導入

令和6年度報告の主な変更点

マニュアル・様式はまだ旧バージョンで、後日掲載予定のようです。

算定方法・排出係数は、昨年12月12日に更新されています。

1.については、2006年のSHK制度開始以来見直しがされていなかったところ、UNFCCC事務局へ提出している国家インベントリは毎年のように見直されており、乖離が見られていたことを踏まえた変更。

算定対象活動の追加や区分見直しは「算定方法・排出係数一覧」を参照頂くとして、注意すべきは、係数の「数値」の更新です。

ほとんど修正が入っていますので、算定担当者は現在使用しているデータベースを更新しましょう。Saasなどの算定サービスを利用しているのであれば、提供会社へ確認することをお奨めします。とにかく、マネジメントシステムのキモ「最新版管理」を徹底しましょう。

これはこれでよいとして、個人的には、地球温暖化係数(GWP)についての論点を指摘しておきたいと思います。

これまでは、IPCC第4次報告書の100年値を使用していました。
今回の変更では、最新であるIPCC第6次報告書の100年値が採用されます。

令和6年度報告からの温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度の変更点について より

ですが、2050年ネットゼロを目指すという合目的的に考えるのであれば、100年値ではなく、20年値を使うべきだと考えています。

GWP(Global Warming Potential:地球温暖化ポテンシャル)
ある物質の単位質量の排出に伴う放射強制力を、参照物質である二酸化炭素(CO2)の放射強制力と比較して、選択した時間軸で累積した値を測定する指標。したがって、GWPは、これらの物質が大気中に留まる時間の違いと、放射強制力を引き起こす有効性の複合効果を表す。

IPCC 用語集より

つまり、GWPとは、特定の温室効果ガスが大気中に放出されたときに、一定の時間枠内で地球の気温をどの程度上昇させるかを示す指標であり、その期間が20年、100年のものを、それぞれで「20年値」「100年値」となります。

今から30年後程度の短期的な影響を考えているときに、100年値のような長期的な影響を表す指標を使うというのは、妥当な判断なのでしょうか。

特に、メタンは今回の変更で、25から28へと大きくなりますが、50年値であれば81.2です。2050年断面では、依然として相当量のメタンが大気中に残存しており、「想定」よりもはるかに大きな温室効果をもたらしていることでしょう。

IPCC_AR6_WGI_Chapter07_SMより

2050年ネットゼロは、そこまで急激に排出を減らさなければ、温暖化を止められないという認識の下、合意された目標だったと思います。2100年ネットゼロでよければ、100年値でもよいかもしれませんが。

この議論は、日本だけで解決するものではないため何とも言えませんが、このような論点があるということは、知っておいてもらいたいと思います。

最後に、排出係数について一つアドバイス。
実は、係数一覧から「ガソリン」がなくなっています。

算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧より

これについては「揮発油」の排出係数を使用すればよいとのこと。
「ガソリンだけ何故?」と思わないでもないですが。

ちなみに、集計・算定を進めていくと様々な不明点が出てくるかと思います。
その際は、グリーン・バリューチェーン ヘルプデスクへメールしましょう。

締切間際になると立て込むでしょうから、今のうちから準備に取りかかり、疑問点等を洗い出しておくとよいでしょうね。

皆さんの算定業務、これからも応援します。
ご期待ください。

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