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2023年のVCMを振り返ってみよう(3)

cCarbonのレビューを拝借して、2023年のVCMについて振り返って見るシリーズも3回目。2回目はクレジットの多様性について説明しました。

この4年を見るだけでも、方法論やプレーヤー、使用しているクレジットスキームなど、多様になっていることが、分かってきました。
今回は、発行量の時期的な移り変わりを、一緒に見ていきましょう。

1回目に、償却量(retirement)について見たときに、季節性を考慮しても、12月が突出して多かったことをお伝えしました。他方、発行量(issuance)については、想定内のようです。確かに、使う側は決算期や暦年末の駆け込みはあっても、創る側はあまり関係ありませんからね。

月別発行量(cCarbib レポートより)

排出回避(avoidance)と吸収除去(removal)の別で見ると前者が圧倒的。
創出する種類(方法論)が多く、技術的にも容易ですから。他方、後者は、現在のところ、自然ベースの森林吸収あるいは土壌貯留の2種類しか方法論が無いため致し方なし。

排出回避・吸収除去別発行量(cCarbib レポートより)

技術ベースではDACなど様々検討されているものの、研究段階の域を出ておらず、コストやスケーリング、サイト、エネルギー等々の問題から、現在のところゼロ。ただ、ネットゼロ達成には不可欠とIPCCも指摘していることから、環境が整えば生まれてくるでしょう。

カーボン・クレジット・レポート(概要)より

このように、削減回避系のクレジット一色のVCMですが、今後、吸収除去系クレジットの需要が高まることは確実。2050年ネットゼロ達成には、吸収除去系クレジットしか使用できませんし、それに至る過程においてカーボンニュートラリティを主張するためにも、ほぼ吸収除去系が要求されると考えられますから。

ISO14068−1:2023 より

ですので、これからクレジットを創ろう、クレジットを購入しよう、という事業者の皆様は、是非、吸収除去系クレジットを検討下さい。

私が推進しているブルーカーボン(Jブルークレジット)も、吸収除去系。
まだJ-クレジットのように、温対法の報告などコンプライアンス目的での使用はできませんが、検討されています。安心してお取り組み下さい。

最後に、ビンテージ年毎の発行量。

「ビンテージ」とは、そのクレジットが発行された年または期間を指します。これはワインのビンテージと似ており、特定の年に収穫されたブドウから作られたワインを指すのと同様に、特定の年または期間に森林が吸収した二酸化炭素量を反映しています。

ビンテージ年毎の発行量(cCarbib レポートより)

何故ビンテージが重要なのかというと、クレジット制度や方法論によって使用できる年が限定されるためです。基本的に、古いほど安く、新しいほど高くなります。

このように、2022年のクレジット(GN2)は$2.48に対し、2016年のクレジット(GN6)は$0.65と安くなっていることが分かります。

ACX 市場レポートより

2023年には、新規発行の半分以上が2年未満のヴィンテージによるもので、市場が徐々に古いヴィンテージをクリアしつつあることを示していると言えるでしょう。

ということで、VCMについて見てきましたが、いかがだったでしょうか。

最近は、ウォッシュ批判が吹き荒れたこともあり、各企業「恐る恐る」といったところではないかと思います。

しかしながら、ICVCMによるCCPや、VCMIによるCoPなど、「高品質なクレジット」が創生される環境が整ってきました。各スキームオーナーもウォッシュ対策に本腰になっています。

悪貨が駆逐され、健全なマーケットが構築されることを期待しています。
一緒に、ゼロカーボン実現に邁進していきましょう。

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