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Scope 3 Flexibility Claim(ベータ版)

23年6月に、クレジットを使う側のルールである、Claim Code of Practice(CoP)のVer.1がVCMIからリリースされたことは、既にご案内済みでした。

これは暫定版という扱いで、11月に予定されている最終版が待たれていたところ、11月28日、COP28開幕前に滑り込みセーフ、リリースされました。

公開されたフレームワークを用いて、企業は、「Silver」「Gold」「Platinum」のクレームバッジを表示できることになります。

今回の目玉は、CoPよりも、「Scope 3 Flexibility Claim」という新しいクレームのベータ版公表ではないでしょうか。

ひと言で言うと、クレーム年(算定した年)のスコープ3排出量(A)と、1.5度目標削減経路における、その年のスコープ3排出量(B)との差分(A-B)について、Aの50%までは「高品質なクレジット」によって控除してよいというもの。

Scope 3 Flexibility Claimより

例えば、Aが100tCO2e、Bが85tCO2eであれば、ギャップは15tCO2e。
15tCO2eは、100tCO2eの50%を超えていませんよね。なので、その分の「高品質なクレジット」を購入して、控除できるというわけです。

この85tCO2eは、基準年の排出量と、1.5度目標経路における2035年の排出量を用いて、このように設定されます。

Scope 3 Flexibility Claimより

この例で2025年を見るとAは95tCO2e、Bは85tco2eなので、10tCO2eのギャップがある。これは、50%よりも少ないので、クレジット購入によって控除し、「on the track」とすることが可能です。

この50%は年々縮小され、2030年には25%、2035年にはゼロになる予定。
VCMIは、50%の緩和措置を使った年から10年以内、あるいは、2035年までに1.5度目標経路とのギャップをゼロにしなければならないとしています。

なお、差分(A-B)がAの50%よりも多い場合は、そもそも、緩和措置を使用することはできないことに注意しましょう。

Scope 3 Flexibility Claimより

例えば、以下の例で、Company Cは、2025年の排出量は175tCO2e、1.5度目標経路排出量は85tCO2e、その差は90tCO2eで50%を超えてしまっています。なので、「使用不可(Ineligible)」となる訳です。

Scope 3 Flexibility Claimより

Company Dは、2025年で既に1.5度目標経路排出量を下回っており、Gapはありません。自助努力で既に目標を達成しているのです。なので、この会社は、要求事項を満足することにより、CoPの何れかのバッジをゲットできる可能性があることになります。

このように、Scope 3 Flexibility Claimは、VCMIのCoPの「Silver」「Gold」「Platinum」のクレームを達成するための橋渡しになっているのです。

このような「Flexibility Claim」が開発されたのは、現時点でのギャップがあまりにも大きいという現状認識があり、削減対策に、速やかなファイナンシングがなされるべきという課題意識が背景にあるとのこと。

クレジットの購入を通じて、必要なところに十分な資金が環流すれば、地球全体の排出削減に繋がりますし、ボランタリークレジット市場の活性化も期待できる。CoPのクレームもその目的ですから、納得です。

とはいえ、クレジットの購入により、削減努力を蔑ろにするといった、モラルハザードは許されません。厳格な「Guardrails」が求められます。

まだまだ、ベータ版ですので、これからコンサルテーションやバージョンアップ、ロードテストが予定されています。ロードマップでは、最終版のリリースは2024年の第3四半期となっています。

クレジットについては、COP28における第6条2項の議論が待たれます。
非国家アクターから、新イニシアチブ発表やアップデートもあるでしょう。
「何も決まらないから」と諦めず、期待して待っていたいと思います。

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