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排出権取引の現在地

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カーボンプライシングの1つ、排出権取引。世界を見渡すと、EUや中国、韓国、ニュージーランドなど、幅広い国で実施され、着実な効果を上げています。日本で検討されているGX-ETSはど…
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#カーボンプライシング

世界銀行のCPレポート 斜め読み(1)

世界銀行(世銀)は、こちらのダッシュボードを通じて、世界のカーボン・プライシング(CP)の情報を発信しています。 説明をしておくと、CPには次の3つの種類に区分されます。 排出量取引(Emisssion Trading Scheme:ETS)のみであれば、ICAP(International Carbon Action Partnership)も重要な情報源です。 導入されている国・地域がマップやリストで示されますし、排出権価格(Allowance Price)のチャー

排出権/クレジット価格の相場観

クレジットの認知度が高まるにつれ、「どんなクレジットがあるのか」「どこで買えるのか」「何に使えるのか」「いくらなのか」と聞かれることも増えました。 ということで、今回は「いくらなのか」についてご案内したいと思います。 なお、カーボンプライシングとしては、その他に炭素税ありますが、あちらは法律によって金額(率)が決められており、市場メカニズムで変動しないので、今回は扱いません。 さて、まず、法的拘束力を持つか否かによって異なります。 ご想像通り、法的拘束力を持つ方が、高い

カーボンプライシングとGX戦略(3)

「カーボンプライシング」と「GX戦略」を「脱炭素」というキーワードを絡めて、どのように活かしていくかを探るシリーズ、3回目です。 2回目では、「カーボンプライシング」の定義と「GX戦略」の内容について、簡単にご説明しました。「成長志向型カーボンプライシング」のロードマップもざっとご案内したところです。 それを踏まえた上で、どのように活用していけばよいのかを、一緒に考えて行きたいと思います。 中小企業の経営者であれば事業に直結しますし、大企業のサス担当であれば経営戦略に環

カーボンプライシングとGX戦略(2)

「カーボンプライシング」と「GX戦略」を「脱炭素」というキーワードを絡めて、どのように活かしていくかを探るシリーズ、2回目です。 1回目は、こちら。 まずは、耳にタコかもしれませんが、定義のお話を。 「Emission Allowance」という「権利」を「取引(Trading)」するものなので、個人的には「排出量取引」ではなく「排出権取引」であるべきというスタンスですが、政府がこのように表現するので合わせておきます。ちなみに、「排出枠取引」と言っているメディアもありま

カーボンプライシングとGX戦略(1)

最近、とみに聞く言葉ですよね。 noteでは「カーボンプライシング」については何度となくお伝えしているところ、「GX戦略」は知っているけど、その実あまり理解できていない、そんな方もいらっしゃるかと思います。 かく言う私も、熟知している訳ではありませんが、関係については理解しているつもりです。簡単に言うと、「一度で二度美味しい」施策です。 個人的には、「やらないと損」どころではなく、「ダメージ」を受けるレベルだと考えています。なので、常々、このようにご案内しています。 そ

ICAP Status Report リリース(1)

毎年楽しみにしているレポート、ICAPの2023年版がリリースされました。 ICAP(International Carbon Action Partnership)が2014年から発行しているレポートで、世界のETS(Emissions Trading Systems 排出権取引制度)の現状を包括的に取り扱っています。 EU-ETSは2005年開始、国内クレジット(現 J-クレジット)は2009年開始。 私も、2009年よりクレジットに携わってきましたが、当初は、ETS

素朴な疑問シリーズ〜排出権?排出量?

平成20年「福田ビジョン(覚えてます?)」に基づき、排出量取引の国内統合市場の試行的実施が開始されました。 1.試行排出量取引スキーム 2.国内クレジット 3.京都クレジット この3つを「統合」した国内市場を設け、クレジットの売買をする構想。 カーボンプライシングの一翼として再び議論されている「排出量取引」市場が、国内で産声を上げたのです。 まぁ、「知る人ぞ知る」ではありますが、一応、新聞やメディアで報道されたので、記憶にある方もいらっしゃるかと。 ですが、新たな概念

GXリーグ基本構想

経産省が打ち出した「GXリーグ基本構想」 3月31日締切で賛同企業を募集していましたが、440社に達したとのこと。 排出量削減に貢献しつつ、外部から正しく評価され成長できるしゃかい(経済と環境および社会の好循環)を目指す。 としていますが、環境NPO/NGOをはじめ、産業界他から様々な不備・課題が指摘されています。クレジット及び排出量取引に携わってきた私からしてみても、同意せざるを得ません。 10年以上も議論を尽くしたじゃ無いですか。 声を大にして言いたいです。 環