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排出権取引の現在地

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カーボンプライシングの1つ、排出権取引。世界を見渡すと、EUや中国、韓国、ニュージーランドなど、幅広い国で実施され、着実な効果を上げています。日本で検討されているGX-ETSはど…
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2024年2月の記事一覧

ASEANにもサスティナビリティプラットフォーム

ブルサ・マレーシア・ベルハド(ブルサ・マレーシア)、インドネシア証券取引所(IDX)、タイ証券取引所(SET)、シンガポール取引所(SGXグループ)は、それぞれのデータ・インフラに共通のESG指標を導入することで、ASEANの持続可能な開発を推進するため、ASEAN-Interconnected Sustainability Ecosystem(ASEAN-ISE)に関する協力を発表しました。 プレスリリースでは、ASEAN-ISEの目的は以下のように謳われています。 こ

VCMに革命をもたらす10のイノベーション(2)

格付機関のBeZero Carbonが、VCMの現状を打破してくれる10のイノベーションについてレポートをリリースしています。ただ、クレジットに馴染みのない方にとっては「?」となるところもありますので、分かりやすく説明しながら、内容をお伝えしていきたいと思います。 前回は、前置きで終わってしまい、申し訳ありません。 ですが、背景についてご案内していますので、よろしければ参照ください。 10のイノベーションを、再掲しておきますね。 今回は、1〜3についてご案内していきます。

VCMに革命をもたらす10のイノベーション(1)

クレジットの創生に東奔西走する私としては、捨て置くわけにはいかないタイトルのレポートを、BeZero Carbonが出していました。 BeZero Carbonは、独立したリスクベースでプロジェクトの品質を評価するカーボン・クレジット格付企業です。 専門のアナリストと独自のモデルにより、ライフサイクルのあらゆる段階に対するレーティングとリスク分析を行っており、その方法論や評価フレームワークが常に公開されていることから、個人的に期待しています。継続的に監視され更新されるのも

VCMのプラットフォーム〜ACX

VCMの動向をチェックするのにお世話になっているのが「ACX」 カーボン・クレジットの取引が全てウェブ上で完結するマーケットを提供する企業です。安全で信頼性が高く、堅牢なプラットフォームを提供、透明な価格設定、効率的な取引、決済リスクの軽減、低い手数料を謳っています。 皆さんご存じのように、ボランタリークレジットは、まだまだ相対取引がほとんどを占めているため、いくらで取引されたのかは分かりません。そこに、ACXのような、クレジット価格がウェブ上で確認できる市場の存在価値は

中国のETSとVCMの現在(2)

みずほ銀行のレポートを情報源に、中国のETSとVCMの現状をキャッチアップしております。前回は、イントロだけで終わってしまいましたので、今回は、中身に入っていきたいと思います。 ETSとVCMとは何ぞや、について簡単に説明していますので、ご関心のある方は、参考になさって下さい。 さて、前回説明したCCER(China Certified Emission Reduction)から話を始めましょう。中国が温室効果ガスの排出量を削減し、環境保護目標を達成するために設計されたも

中国のETSとVCMの現在(1)

JPXにおけるカーボン・クレジット市場が試行期間を経て、2023年10月11日、華々しくオープンしたことは、皆さんも記憶に新しいところでしょう。 GXリーグも、2022年度の「構想」から実行段階に移りましたし、政府はGX推進法案を採択するなど、2023年は「カーボン・プライシング」元年と言ってよい年だったかもしれません。 GX戦略とカーボン・プライシングについては、noteでも詳しく説明しましたので、詳しくはこちらを参照ください。 さて、そんな2023年も過去のものとな

ブルーカーボンのおさらい(3)

皆さんの関心が高まってきたことを受けて、改めてブルーカーボンについて、簡単なおさらいをしております。 1回目は、ブルーカーボンの定義についてお話ししました。 2回目は、ブルーカーボンを取り巻く情勢について。 3回目の今回は、ブルーカーボンの登録・認証スキームである「Jブルークレジット」についてご案内していきます。 「Jブルークレジット」とは、パリ協定の発効に伴い、いわゆるブルーカーボン生態系のCO2吸収源としての役割その他の沿岸域・海洋における気候変動緩和と気候変動適

ネットゼロとカーボンニュートラリティ(3)

2回に亘り、ネットゼロとカーボンニュートラリティについてご案内してきましたが、ISO14068−1では、分かりやすい図や表を用いて説明されています。だったら「先にやってよ〜」とお叱りを受けそうですが、定義の言葉を丁寧に拾いたいと思い、このような構成にしました。 規格の方では、「5.3 Carbon neutrality pathway」という章を設け、カーボンニュートラリティを目指すに当たっては、このような経路をたどるでしょうという事例が掲載されています。 何もしていない

2023年のVCMを振り返ってみよう(3)

cCarbonのレビューを拝借して、2023年のVCMについて振り返って見るシリーズも3回目。2回目はクレジットの多様性について説明しました。 この4年を見るだけでも、方法論やプレーヤー、使用しているクレジットスキームなど、多様になっていることが、分かってきました。 今回は、発行量の時期的な移り変わりを、一緒に見ていきましょう。 1回目に、償却量(retirement)について見たときに、季節性を考慮しても、12月が突出して多かったことをお伝えしました。他方、発行量(is