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排出権取引の現在地

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カーボンプライシングの1つ、排出権取引。世界を見渡すと、EUや中国、韓国、ニュージーランドなど、幅広い国で実施され、着実な効果を上げています。日本で検討されているGX-ETSはど…
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2023年10月の記事一覧

EmbeddedとAttributed

CBAMの移行期間(Transition period)が、2023年10月より始まりました。 2025年12月31日まで26ヶ月かけて、対象セクター企業及び当局が、報告内容・報告、システム運用等々の学びを重ねる予定であることは、ご承知かと思います。 スムーズな導入に当たって、欧州委員会は、ポータルサイトにおいて、ガイダンス資料やオンデマンド動画を提供していると共に、必要な情報をリアルタイムで発信しているので、頻繁にチェックされるのがよいかと思います。 中でも、9月から1

カーボン・クレジットの業界地図

先日、海外のプロバイダーから「このところVerraの動きが遅い」という話を聞きました。自身は国内のクレジットしか扱っていないので感覚は無かったのですが、改めて考えると宜なるかなと思いました。 以降は、完全に個人的な見解、というか、妄想かもしれませんが、お付き合い頂ければと思います。 JPXがカーボン・クレジット市場を開設し取引が開始されたことで、これまでは「知る人ぞ知る」状態だったクレジットも、市井の方々にも知られるところとなったかとは思います。 世界的には日本とは比較

アジアで勃興?!炭素市場

10月23日付の日経産業に、IETA(国際排出取引協会、International Emissions Trading Association)CEO、ダーク・フォリスター氏のインタビューが掲載されていました。 IETAは、国際的な排出取引の確立を目的とする国際的な協会です。ネットゼロ目標を達成するためには、高い信頼性を持つETSが必要という認識の下設立された非営利のビジネスグループであり、企業が気候行動に参加し、パリ協定の目的を進めるためのネットゼロの野心を追求することを

インドネシアETSは前途多難?!

以前のnoteで、インドネシアETSについてご案内しましたが、メディアの報道のみしか情報がなく、詳細は分かっておりませんでした。 そんな中、ICAPが「New Generation of Emissions Trading Systems in Asia」 というタイムリーなウェビナーを開催してくれました。 ICAP(International Carbon Action Partnership)は、地域や国の間で排出取引制度(ETS)の設計と実施に関する知識と経験を共有

GSがCCP(プログラムレベル)評価を申請

こちらのnoteで、しつこいくらいにお届けしている「高品質なクレジット」 その共通ルールとなるべく、ICVCMが「Core Carbon Principles:CCPs」の第一弾を3月に公開、第二弾を7月に公開して「完全体」になった旨も、いち早くお届けしました。 CCP認証は次の2種類の認証がありますが、ICVCMが行う認証は「1.プログラムレベル」のみです。 「プログラム」とは、例えば、Verraの「VCS」やゴールドスタンダードの「GS」などの「カーボン・クレジット

JPXのカーボン・クレジット市場始動

10月11日、JPXがカーボン・クレジット市場を開設、売買が始まりました。 9月22日に開設日が決定して以来、徐々に注目が集まっていましたね。 JPXでは同日式典が開かれ、出席した西村康稔経済産業相が「カーボン・クレジットの活用は、社会全体の効率的な排出削減を実現しながら民間企業のGX(グリーントランスフォーメーション)投資を引き出していく効果を持つ取り組みだ」と話したことも、各メディアで伝えられていました。 ここまでメディアで採り上げられたことに正直驚いていますが、まぁ

クレジットで地球をもっと元気にしよう

「クレジットを創りたいんですけど」 この1年、何度このセリフを聞いたか分かりません。 2009年に、国内クレジット及びJ-VER(現在のJ-クレジット)が立ち上がった当初から関与してきた自分からすると「感慨もひとしお」なのですが、必ずしも喜ばしい状況とは言えません。 京都議定書において、削減目標を達成するための手段として、排出権取引が導入された頃、金融商品の位置づけとして、つまりマネーゲームの一形態として注目を浴びたこともありましたが、現在は、加えて、「ブロックチェーン」

世界のETSのステータスは「on the track?!」

先日のnoteで、台湾が、台湾証券取引所と台湾当局系ファンドの国家発展基金が共同で、台湾初のETS「台湾炭権交易所」を設立、2024年前半にも取引をスタートさせることを公表したことをご案内しました。 かつてトップを走っていた日本のETSは、半導体や再エネなどと同じ轍を踏むのか?という思いでお伝えしたところですが、「Under development」だったブラジル、及び、2013年から「In force」だった広東省ETSの進展が伝えられました。 まずは、広東省ETSの方

カーボン・クレジットマーケット元年

先月末、JPXが「カーボン・クレジット市場」の開設日を発表しました。 メディアが一斉に伝えましたので、皆さんもよくご案内のことでしょう。 2022年9月から2023年4月まで実施した試行事業では、実証参加者は183者、実際に注文したのは60者、売買が成立したのは55者だったとのこと。活況とは言えない状況ではありましたが、本稼働ではどうでしょうか。 取引対象は、当面はJ-クレジットのみですが、JCMやGXリーグの超過排出枠にも対象を拡げたいとしています。また、立会外取引も想

カーボン・クレジットの将来は明るい?

Environmental Financeが毎年実施している「Environmental Carbon Market Ranking Award」が今年も発表されました。 この賞は、環境市場における持続可能性や環境保護への取り組みを促進し、その業績を広く知らせるためのものとなっています。 馴染みがないかと思いますので、簡単に説明しておきますね。 今年のランキングは、エントリー数、投票数ともにこれまでで最多。22のカテゴリーで合計4,300票の投票があり、今年は新たに「ベ