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排出権取引の現在地

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カーボンプライシングの1つ、排出権取引。世界を見渡すと、EUや中国、韓国、ニュージーランドなど、幅広い国で実施され、着実な効果を上げています。日本で検討されているGX-ETSはど…
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2023年9月の記事一覧

日本のETSはどこへ行く?

今年23年8月、台湾が、台湾証券取引所と台湾当局系ファンドの国家発展基金が共同で、台湾初のカーボン・クレジット市場「台湾炭権交易所」を設立、関連する法整備などを行った後、2024年前半にも取引をスタートさせることを公表したことは、皆さんご承知かもしれません。 アジア(東・東南・南)では、中国(全中国・パイロット)、韓国、カザフスタン、東京、埼玉が本格稼働していますが、この「コンプライアンス」市場に、台湾が来年から加わるわけです。 Japanの「Under consider

非化石価値取引結果 23年度第1回

23年度初回となる非化石価値取引市場の取引結果が、8月31日までに全て出揃いました。(約定日は、非FIT(再エネ指定無し)、非FIT(再エネ指定)、FITがそれぞれ、29日、30日、31日) 約定量を見ると、非FIT(再エネ指定なし)がダントツに伸びています。 FITも伸びていますが、伸び率では雲泥の差となっています。 他方、非FIT(再エネ指定)は逆に減っています。 ですが、落札率を見てみると、違う世界が見えてきます。 こちらは、約定量/売入札量ですが、非FIT(再エ

NZ-ETSの衝撃

2008年に導入されたNZ-ETSは、2005年に開始されたEU-ETSには及ばないものの、長い歴史を持ち、常にアップデートを行ってきた「老舗」です。 2017年、37歳で当時世界最年少の女性首相、アーダーン氏を輩出するような革新的なイメージのあるニュージーランドですが、ETSにおいても「先見性」を活かした画期的なシステムとなっています。 特に目を見張るべきは、セクターカバー率の高さです。 国の排出量全体に対するカバー率は49%に留まりますが、農業以外の産業セクターは全