はじまり2

ライブ当日。

ここには、以前プロ野球の試合を見に来たことがあるくらいでした。

土砂降りの中、グッズを買って食事をしました。このとき買ったキーホルダーを私はずっとキーケースに付けていた。思い出になるなと思ったから。前回よりもたくさんの話をしました。仕事のことが多かった印象。ここで学生時代にバスケ部だったことを知ります。思い込みで帰宅部だと思っていたので、意外だなと感じた。

次の日も休み希望を出していたので、部屋で一人、ゆっくりしていました。彼女も休みをとっていて、前日のライブが楽しかったのか、Twitterのスクショをこれでもかと送って来た。

好きだ、という気持ちは日に日に高まっていました。彼女は源さんの他に欅坂も好きだと言っていて、他の同僚とライブにも行っているようでした。自分も以前、興味があったけど、やっぱり好きになりきれなかったのがあって、好きなメンバーの話をしては「かわいい!」を連呼する彼女のことを「かわいい」と思っていました。でもいつか、そのライブにも行けたらいいな。そんなことを思っていた。

もっと話がしたい。もっと近づきたい。ゴールデンウィーク明けに欅坂のライブがあると喜んでる彼女の姿を見て、嫉妬している自分に気付きました。源さんを好きな熱量とどっちが大きいんだろう。そしてその同僚に対する嫉妬も。今ごろライブ楽しんでるんだろうな。やっぱり自分はただの同僚だよな。そんなことを考えてはやめる。その繰り返し。

仕事忙しいよね、という話をしていたら「仕事が落ち着いたら食事にでも行きましょう!」というお誘いがありました。もちろん「みんなで」という意味は理解していたけど、自分は「彼女と二人で」ということしか考えていなかった。

日取りを決めて誘ってみるとオッケーが出た。せっかくなのでレストランを予約した。といっても、街の小さなお店です。

スタバに行く勇気がないと言っていたので、じゃあこのまま食後に行くか!とスタバに行きました。彼女の車を止めてあった駐車場で、そのまま深夜の2時まで語ってしまった。

またある日、彼女は「明日休みだけど車検で、会社の近くに行く」という話をしてきました。自分も休みだったし、会社の近くに住んでいるので「じゃあ待ち時間、スタバでお茶しようよ」と誘ったら「いいんですか!」と返事。

ミニのワンピースに身を包んだ彼女はとても可愛かった。その日の夜、実家に帰る予定があったのだけど、結局キャンセルしました。話せば話すほど、彼女のことを深く知りたい。そして好きになっていきました。

2019年の夏前くらい。私は同僚に誘われて九州へ旅行に行く計画を立てていました。そのことを彼女に話したら「ねるちゃんの出身地!」と言っていた。

ちょうど、私が旅行に行く時を同じくして、彼女は坂道のライブがあると教えてくれました。それを楽しみにしてる光景は、私の心に深く突き刺さった。本当はあなたと旅行に行きたい。そう思っていたからです。

私は旅行中も美味しいものや綺麗なものに出会うと、彼女に教えたいという気持ちに襲われていた。毎日連絡をするような関係ではなかったけれど、一緒に旅行をしている同僚のことは彼女も知っているし一か八かで連絡をしました。

すぐに返事があって「旅行いいなぁ」というものだった。

旅の恥はかき捨て、とはよく言ったものだけど、その夜、同僚と酒を飲みながら「好きな子はいるのか?」なんて話をしている中で、なんとなく気が大きくなって、メールの流れで「好きです」ということを伝えました。

彼女は冗談だと思ったらしく「飲み過ぎ」と返信があった。

夫と子供がいる女性に好きだ、と伝えることの意味を私は理解しているつもりでした。一緒にライブに行ったこと。そして坂道のライブにもよく行っていること。そして旦那さんや同僚への嫉妬。でも伝えないと後悔する。それだけが自分の心に重くのしかかっていました。このトゲを抜くには、そして気持ちにケリをつけるためにも、伝え続けるしかない。

この頃から一気に連絡を取るようになりました。会社でも、仕事が終わってからもずっとメール。そしてことあるごとに「好意」というよりも「好きだ」という気持ちを前面に。

旅行から帰って1週間後、彼女は「遅番なので今日は自由時間」というメールを送って来ました。自分は休みで、部屋でお酒を飲んでいた。「何をしようかな」と言うので「じゃあ飛行機でも見に行く?」と誘った。

「俺、お酒飲んじゃったから、迎え来て、だけどw」
「行ってみたい!でも私の運転で行けるところですか?」

結局迎えに来てもらって、飛行機の見える公園に行きました。夜はデートスポットになっているらしいんだけど、その日は人もまばら。バズーカみたいなレンズのカメラをを持った強者が端にいるくらいでした。

しばらく飛行機を眺めて話をしていましたが、自分はその横顔を見ているうちに、我慢ができなくなった。少しずつ距離を縮めて腕に触れる。なにも起こらない。そのまま腰に手を回す。なにも起こらない。

そのまま後ろから抱きしめる。まだ何も起こらない。そのまま服の上から胸に触れた。

振り向かれて、少し目が合ったけど、そのまま触り続けた。しばらくして「おしまーい」と言われ手を掴まれた。

「…帰ろっか」

そのまま無言で公園をあとにします。気まずい。謝るべきか。どうしようと思っているうちに、部屋に着きました。少し話をしてそのまま別れた。手にはその感触だけが強く残っていました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?