雨の日曜日 小村雪岱展
作者の名前を知らなくても一度は目にしたことのある『おせん 傘』はフランスの版画家ヴァロットンの街中を描いた版画を思わせる。
小雨の降る日曜日に小村雪岱展の後期にでかけた。
会場も雨が降っていた。しとしとと小雨が降り続く。空気がけむぶらない程の雨だが、いつまでも止まない。やがて日が暮れて夜になる。傘をさしている女性、舟から水際に手を差し出す女性、川沿いをゆく女性。みなが着物を着ている。昭和初期なのだから、時代的には洋装であってもおかしくないのだが、雪岱は譲らない。日本女性が最も美しく見える姿しか描かない。そして、そこにはいつも水がある。
肉筆画の線は、とてつもなく細く、そこに彼の力量がうかがわれる。どれだけ細い線を描けるのかが日本画家の腕の見せどころ。
多く手がけた書物の装丁はウィットに富み、お洒落な出来上がりになっている。贅沢すぎる本。小説も漫画もスマホで読めるこの時代には、考えられない豊かさ。
人は利便性を求めると、ゆとりを失う。スマートフォンをスマホと略して、いろいろとカットしてきた現代、もう、ぎゅうぎゅうです。雪岱が見たら呆れるかな? でも、版画も国華の仕事も新聞の挿絵も舞台装置の原画もこなした器用な彼は、時流に乗ってマルチに活躍するかも。
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