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【飲食店向け】 テイクアウトしたいと思った時に知るべきこと

地域や保健所の管轄により全て一律ということではありません。この記事は一般的な知識として参考にしていただき、実際に営業する際は、最寄りの保健所に確認してください。

シェアキッチンを運営しながらフードビジネスコンサルタントとして飲食店さんや食品のメーカーさんの相談に乗っています。
新型コロナウィルス感染防止として、緊急事態宣言による外出自粛に伴い飲食店の業務の自粛や縮小により思うような営業が出来ずにいます。
昨今、多くの飲食店ではテイクアウトやデリバリーにシフトする動きがあります。様々な方からいただくご相談をもとに、テイクアウト営業をするための保健所の許可をまとめました。
何度も繰り返しになりますが、既存で取得している営業許可、設備、地域性、取り扱い商品により異なりますので最寄りの保健所にお問い合わせください

営業許可について

食品を営業目的で取り扱うためには、保健所の許可が必要です。よくシェアキッチンにも調理師や栄養士の資格の持っているから大丈夫という方がいらっしゃいますが、資格があるから営業出来るということではありません。
人にかかる許可ではなく、「場所」つまり営業するお店や施設に許可されます。在宅勤務でシェフの自宅のキッチンで作ったものをテイクアウトにしますというのはNGです。

許可施設の要件として、例えば以下のような項目があります。
・居住スペースと営業スペースを区別する
・厨房内にシンクとは別に手洗い設備があること
・使用用途に応じて壁、扉などを設置する
など様々な規定があります。

お店で飲食店営業許可を取得されてるのであれば、テイクアウトは飲食店営業許可の範囲内で営業が認められています。ただし、商品によってはテイクアウトが出来ないものもあります。次にあげる商品は飲食店営業許可のみではテイクアウトが出来ない商品です。

テイクアウトが出来ない商品

飲食店営業許可だけではテイクアウトが出来ない商品を販売している例を時々見かけます。販売が出来ない主要なものを次にあげます。

1.パン
お店で焼いたパン(食パン、菓子パンなど)を調理や加工をせずにそのまま出すことはできません。販売するには菓子製造業許可が必要です。

サンドイッチやホットドックなどの調理パンは、飲食店営業許可の範囲でテイクアウト可能です。
また、仕入れたパンを個包装のまま販売することは問題ありませんが、袋から出して調理加工せずにそのまま販売することは出来ません。

※菓子製造業許可は、飲食店営業許可と同じ施設で取得することはできません。ただし時間帯で切り分けが可能なシェアキッチンなどは、同施設での取得が可能な例もあります。(地域によって異なります)

2.菓子
クッキーやケーキ、和菓子も含めて菓子製造業許可が必要です。
焼き芋、ドライフルーツは菓子には該当しませんので販売許可は必要ありませんが、ドライフルーツにチョコレートをコーティングするなどの加工をした場合は、菓子としてみなされます。

3.乳製品
例えば、パンのディップとしてクリームチーズやバターを販売するときなど、乳を主原料とする食品を販売をする場合、乳類販売業が必要です。バターホイップや副材料を入れて加工する場合は、乳製品製造業も必要です。

4.瓶詰め、缶詰
ジャムやパテなどを瓶詰めして販売するためには、かん詰又はびん詰食品製造業許可が必要です。例えば、瓶や缶ではなく、プラスティック製の容器(以下の写真参照)で販売する場合は、飲食店営業許可の範囲です。

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5.オリジナルソース、ドレッシング
お店のオリジナルのソースやドレッシングを販売目的のみで製造する際には、ソース類製造業許可が必要です。ただし、テイクアウトのお弁当にタレを別添する場合は許可の必要はありません。店頭で小分け販売する場合は、飲食店営業許可の範囲で特別な許可は必要はありません。

6.食肉製品
食肉製品とはハム、ソーセージ、ベーコンのほか、ビーフジャーキー、ローストチキン、コーンドビーフなどをいいます。また、食肉を50%以上含むハンバーグ、ミートボールなども含まれます。これらを販売する場合は、食肉製造業許可が必要です。
ただし、調理加工して料理として販売する場合は、飲食店営業許可の範囲販売可能です。

7.冷凍食品
提供している商品を冷凍して販売する場合、魚介類などを冷凍で販売する場合は、特別な許可及び急速冷凍設備などが必要です。管轄の保健所にお問い合わせください。

8.ビール、ワイン、日本酒などのアルコール類
店内でのアルコール類は飲食店営業で提供出来ますが、酒税法による縛りがあるためアルコール類のテイクアウトはできません。

しかし現在、新型コロナウイルス対策下における特例として一般の酒類小売業免許とは別に、新たに「期限付酒類小売業免許」を設け、これは、飲食店の在庫酒類の持ち帰り用販売等により資金確保を図るもので、迅速な手続で期限付酒類小売業免許されます。

以下国税局ホームページより引用(2020/4/16閲覧)

【措置の概要】
〇 料飲店等が、新型コロナウイルス感染症に基因して、在庫酒類の持ち帰り用販売等により資金確保を図るものについて、迅速な手続で期限付酒類小売業免許を付与します。
〇 令和2年6月30日(火)までに提出のあった免許申請書に限ります。
〇 免許には、免許付与から6か月間の期限が付されます。
〇 自治体等から各種の要請等がある場合、これに従うことを条件とします。
(注)
1 今般の期限付酒類小売業免許についても、一般の酒類小売業免許と同様に、酒類の仕入れ、販売について帳簿に記帳する義務が課されるほか、販売数量の報告等を行う必要があります。
2 今般の期限付酒類小売業免許を付与された料飲店等は、既存の取引先小売業者との取引が引き続き可能です。
3 今般の期限付酒類小売業免許で販売できる酒類は、既存の在庫をはじめ既存の取引先からの仕入れの販売に限ります。
4 今般の期限付酒類小売業免許を付与された料飲店等が、料理に併せるなどして酒類を宅配することは可能ですが、インターネット等を利用して、2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として酒類を販売することはできません(別途、通信販売酒類小売業免許を取得する必要があります。)。
5 今般の期限付酒類小売業免許を取得する場合においても、販売場ごとに、酒類販売管理者を選任する必要があります。

料飲店等期限付酒類小売業免許の申請様式及び記載例はこちらから
国税庁ホームページ参照

表示義務について

食品を販売する際には、原材料や賞味/消費期限の表示義務が必要ですが、飲食店営業のテイクアウトでは、直接お客様に説明することで省略出来ます。
また、アレルギーの表示は購入前にお客様が確認出来ることが望ましいでしょう。
表示義務及び表示を推奨されているアレルギーの品目については以下の通りです。

特定原材料7品目(表示義務)
・えび ・かに ・小麦 ・そば ・卵 ・乳 ・落花生
特定原材料に準ずるもの21品目(表示推奨)
・アーモンド(2019年追加) ・あわび ・いくら ・カシューナッツ ・オレンジ ・いか ・キウイフルーツ ・牛肉 ・鶏肉 ・豚肉 ・くるみ ・ごま ・大豆  ・さけ ・さば ・バナナ ・まつたけ ・もも ・やまいも  ・りんご  ・ゼラチン

アレルギー表記に関しては、命に関わる重篤な症状を持つ人もいるため記載には十分な注意が必要です。

商品の受け渡しの際の注意点

1.注文の商品と間違いがないかを確認する
店内でのオーダー間違いもあってはならないことですが、テイクアウトの商品の場合、お客様が持ち帰った後で間違いが発覚した場合、交換のための手間やコストが数倍かかります。受け渡しの際にはお客様と一緒に確認することをオススメします。

2.保存方法、消費期限については口頭で伝える
表示の義務はありませんが食中毒防止の観点からもいつまでに食べてもらいたいのかは明確に伝えます。「本日中にお召し上がりください」や「冷蔵庫で保存してください」などを必ず商品受け渡しの際にお伝えします。
また、温め方やお召し上がりの方法などをお伝えするなど、おいしく召し上がっていただく説明を添えるのもよいでしょう。

食中毒防止について

テイクアウトは飲食店営業の数倍のリスクが伴います。お客様の手に渡ったあとどのような環境で保存され、いつ食べるのかはお店では把握できません。また異物混入についても、いつも以上に対策をし注意を払うことが大切です。

賠償責任保険加入

現在なんらかの保険に加入していればテイクアウトが保証範囲内であるかを確認してください。保証範囲外であれば特約やオプションなどで変更してください。

交差汚染(コンタミネーション)予防

調理済み食品や加工品が、原材料や下処理をした材料と交わって汚染されることを言います。肉類を調理して汚染された場所と非加熱食材の調理するタイミングや場所が交差することで非加熱食材が汚染されることです。
調理オペレーションの設計や工程ごとに洗浄や消毒する、調理スペースを区切るなどの方法があります。

アレルギー食材も交差汚染により混入します。微量でも反応することもあるためアレルギー食材が調理工程にある場合は、その商品に入っていなくても「エビ、カニを同一作業場で調理しています」など説明が必要です。

消費税について

テイクアウトの場合消費税は8%です。
レジシステムを使用の場合は、店内提供とテイクアウト用の商品は別で登録した方がいいでしょう。

以上が飲食店がテイクアウトをしようと思ったときに知っておくべきことです。感染防止のため人と会うことが制限され、飲食店営業をするうえでは大変な時期ですが、みなさんの参考になればと思います。
ただし、地方や管轄の保健所によって異なりますので詳しくは最寄りの保健所にお問い合わせください。

※賠償者責任保険加入、交差汚染(コンタミネーション)予防の項目は2020/4/17追記

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