カードボードサインを持った彼女

カードボードサインを持った人がハイウエイの出口や交通量の多い赤信号の脇にいるのをよく見かける。その人たちは信号待ちで停まる車に何かを求めて訴えている。HELP ME、NEED JOB,　I have ４ chirdrenなどなど。

ある夏の日、信号待ちをしている私の横に立っていたタンクトップにショートパンツ姿の彼女もその一人だった。足元にはパンパンに物が詰まったバックパック。目を合わせない程度にちらっと彼女の様子をうかがう、信号はまだ変わらない。バックミラーを見ると私の後ろは大型トラックだった。

彼女が大型トラックに向かって歩き始めたぞ。サイドミラーを覗くと彼女は爪先立ちをして両手で大型トラックの運転手から何かを受け取っていた。そしてもう一度さらに高くつま先立ちををした　”thanks”　どうやらお金ではなさそうだ、彼女が私の横に戻ってきた。片手にはコーラの缶を、もう片方の手には火のついたタバコを持って。そうして彼女はたばこを大きくひと吸いして口角の上がった口からけむりを吐いた。ほんとうにおいしそうに。

ファジーな衝撃にくらくらしながら車を発進させて帰路についた。

ここはなんて国なんだ、そう思った。