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Eugenの備忘録その26-6/29 渾身のエルガー!-ヤマカズJr.指揮バーミンガム市響

山田和樹指揮バーミンガム市響来日公演
(6/29 19時より、於サントリーホール)

ショパン:ピアノ協奏曲第2番〇
エルガー:交響曲第1番

〇チョ・ソンジン(Pf.)

 エルガー1番が格別の演奏。まさに本場の矜持の感じられるノーブルで優美、そして気宇壮大な音楽が力みなく繰り広げられた。ヤマカズJr.の大袈裟なまでの振幅メリハリをもたらす指揮ぶりが遺憾無く発揮され、まさにこの難解な大曲にはドンピシャだった。全体的にテンポが遅く、わけても第3楽章は平均13分前後のところを15分近く要する遅さであったが、この呼吸の深さでこそ語れる深奥な世界があると確信する広がりがある。主題の回帰はその都度懐かしさを感じさせ、循環主題の見え隠れも見事に表す。第1楽章や第4楽章の緊迫感ある場面で思い切ったタメやアゴーギクを作り、デフォルメによりかえって曲の展開構造を顕にし、第2楽章の再現部における要素の錯綜、フィナーレの循環主題の回帰と第2主題の交差も丁寧に処理し切る。非常に明快であった。
 前半はショパンの2番のピアコンをチョ・ソンジンをソリストに迎えて。以前出た1番の録音でも感じたが、奇を衒わない正攻法が良い。わけても第2楽章の沈思黙考といえる没入感、孤独感に才能を感じた。また、編成を絞らないオケも鳴りがよく、心地良い。
 ともあれ今夜はヤマカズJr.が受け入れられた理由がわかる一幕であった。特に自ら熱望しただけあり、エルガーは渾身の演奏で、殆どが生では初鑑賞という聴衆にもその熱さが伝わっていたのではないか。終演後の喝采からそう確信した。

追記

 今日のプレトークでヤマカズJr.が上記ツイートと全く同じことを言っていました。あれはVa.が主旋律だけあり演奏したい思いに駆られます。

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