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Eugenの備忘録その22-6/16 ノセダ指揮N響C定期


6/16 N響C定期(19時30分より、於NHKホール)
ジャナンドレア・ノセダ指揮N響

ショスタコーヴィチ:交響曲第8番

 ショスタコーヴィチ交響曲第8番の一本勝負。
 第1楽章冒頭の弦の慟哭は、第5番の冒頭の延長上にあるが、ノセダはその暗い音楽を容赦ないまでに鮮やかに描き出す。クライマックスの壮絶さと結尾の集中力はお見事。第2楽章は緻密な計算の下、ぎこちない行進を演出。第3楽章はミニマルミュージックの走りともいえる単純な音楽だがノセダの狂気じみた音楽が最高潮に達し、爆撃の痛烈さを呼び起こす。続く第4楽章ではレクイエムというべきパッサカリアのループを沈痛に奏で、フィナーレは再び引き締まり、多くの要素を引き出す。フィナーレの最後は、15番にも繋がるような「終わりの見えない」終結。ここもノセダの緊張感が支配するひとときで会場を暫し静まり返らせた。
 装置でなく実演であることのプラス要素もあるが、ロンドン響との録音より更に一段ノセダの意思が高レベルで張り巡らされた熱演だった。ノセダは楽譜から音楽をあるがままに炙り出す即物タイプの人だが、冷酷無比な恐ろしさすら感じる。1時間あまりがあっという間で、またの機会に4番あるいは10番あたりを聴きたいと思わされた。

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