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【参加レポート⑤】事業構想ツアー2022冬@亀岡 2日目:みずのき美術館を支える2つの活動

  亀岡合宿2日目午後、亀岡のとある美術館を訪ねた。かつての理髪店の建物をリノベーションした建物で、通りから大きな窓越しに中の様子が見渡せるつくりになっていた。入り口には理髪店の名残のネオンサインが出迎えてくれた。

理髪店をリノベーションしたみずのき美術館

 「みずのき美術館」の最大の特徴は、その運営母体とそのコレクションといえる。社会福祉法人松花苑が運営母体であり、障害者を含む文化・芸術促進の公益事業として運営している。松花苑が運営する障害者支援施設「みずのき」にて1964年に開設された絵画教室で制作された油彩やクレヨン画が収蔵作品となっている。日本画家西垣籌一(1912〜2000)が講師として約35年にわたり入所者に絵画を描くことを教えた。その指導力と熱意がコレクション形成の原動力であったことは想像に難くない。1970年代後半には入所者約100人の中から十数人が選抜メンバーとして絵画教室の活動を継続していたという。西垣が「作品を売らない、捨てない」ようにと希望したため、みずのき美術館には約2万点の作品が収蔵されている。作品はアーカイブ化されて館内の端末から見ることができる。

 キューレーターの奥山理子さんからお話しを伺った。みずのき美術館では、収蔵する作品とアーティストとのコラボレーションによる企画展示の活動を行っている。現代美術の作家や、時にはダンサーと共に収蔵庫に入って展示作品を選ぶところから行うという。アーティストにはキユーレーション自体に参加してもらうことで、常に収蔵作品から新しい面を引き出すことに成功している。アーティストの表現者としての感性が、作品に触れることで入所者たちに対する新たな共感となる。最近は亀岡に移動してきたアーティストが参加することも増え、「地産地消」の展覧会活動に繋がっている。

 もう一つの活動として紹介されたのは、美術館を離れて地域住民との交流を生み出す「巡り堂」である。これは、家財回収企業から、役割を終えた画材や文房具を廃棄しない方法はないだろうかと相談を受けたことをきっかけに生まれた、画材循環プロジェクトである。定期的に届けられる画材類を種類や使用状態ごとに分類し、アルコールでクリーニングを行い、もう一度人の目に触れ、新しい出会いに触れ、そして次の使い手に巡る、というコンセプトの下、地域のボランティアが主になって活動を続けている。今後の全国展開も視野に入れているという。

 みずのき美術館の『「物言わぬ人」の真の思いを伝えたい』という切実な願いが、見る者にダイレクトに伝わってくる。その願いは、美術館活動の域を超えて、内外のアーティストとのコラボレーション企画や亀岡の地域住民との協働に繋がっている。みずのき美術館正面の大きく開かれた窓からのぞくみたいに、様々な人にとって開かれた美術館であった。昨今目にすることが増えたアール・ブリュット(生の芸術)を理解するためにまず初めに訪れたい美術館である。

参考資料
みずのき美術館 http://www.mizunoki-museum.org/
「巡り堂」 https://youth-manabinomori.amebaownd.com/posts/36000659/


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