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【参加レポート】事業構想ツアー2021夏@丹波篠山 1日目 (街並み・地域)

2021年8月7~9日、兵庫県丹波篠山市で事業構想ネットワークと小山龍介准教授のゼミのメンバーでの合同合宿を実施し、在校生、卒業生も含む計8名が参加しました。丹波篠山市は兵庫県の東部に位置しており、大阪、神戸、京都からも車で1時間程度の距離感でありながら、昔ながらの日本の原風景を残している地域として注目を浴びています。

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京都駅に朝11時に集合し、8人乗りのレンタカーで丹波篠山へ向かいました。晴天の中、京都と兵庫の真夏の緑々しい自然を車窓から眺めながら、まずは丹波篠山の福住という場所に降り立ちました。福住は京都に向かう宿場町として江戸時代には参勤交代の道として利用されていたこともあり、現在でも古民家が立ち並び宿場町だった面影が見られる風情ある場所です。

車から降りると、大きく広がる青空と山、程よい蝉の鳴き声が、五感を心地よく刺激しました。宿場町の佇まい残す町を散策しながら、お昼ご飯に、「トラットリア アル ラグー」という国の重要伝統的建造物群保存地区の特別家屋に指定を受けた築150年余の古民家をリノベーションし、夫婦2人で経営をされているイタリアンのお店に行きました。 

イタリア・トスカーナ地方の田舎町をイメージした素敵な空間で地元の食材を独自にアレンジしたこだわりの本格イタリア料理をいただきました(詳細はグルメ番外編で)。その後、同じ福住で古民家をリノベーションした自転車屋さん「High Lander」とカフェ「Magnum Coffee」を訪問しました。

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どちらも古民家の面影を残しつつも都会にあるような素敵な空間でお洒落でこだわりの商品が提供されていて、訪問する人を楽しませていました。コロナの影響もあり、人通りは決して多くはなかったですが、素敵な人やお店が集まるところには、また素敵な人や店が集まり、さらに新しい事業が生まれていく地域の好循環の好事例として参考になりました。

さらに同じく福住地区で丹波篠山初のクラフトビールを製造・販売されている「ZIGZAG BREWERY」を訪問し、オリジナルのビールを購入させていただきました。元神戸新聞の篠山東新聞販売所の所長だった山取直樹さんがマイクロブリュワリーに憧れて開業されたそうです。

小ロット生産ならではの機動性を活かし丹波の黒豆など各種原料の組み合わせによる多品種生産に研究に熱心に取り組んでおり、独自のこだわりの製法によりどのビールも芳醇な味わいが感じられました。山取さんは「ビールそのものを売るというよりもビールを飲むことで生まれる場やコミュニケーションを大事にしたい」というビジョンをもって活動されていらしたのが印象的でした。

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その後、丹波篠山城近くの河原町にある宿泊場所「Oito」という古民家ホテルに移動しました。Oitoは篠山河原町でもとりわけ古い、江戸時代末期からある約200年の古い建物をリノベーションし、こだわった家具と町家の昔ながらの風情を残した空間で、宿泊部屋は4部屋しかなく、素敵な檜風呂とともに静かに落ち着いた時間での宿泊になりました。

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夕食は、コロナの影響で飲食店に行きにくいため、地元のスーパーで食材と地酒をいくつか買い出しにいきました。夕食を宿の1回のテーブルに広げながら、丹波篠山市役所の小山達朗さんからスライドと共に丹波篠山の現状と地域課題をお聞きしました。(小山さんはロックTシャツを着て、アルファロメオを乗りまわす市役所の方らしくない風貌の方で、とても熱心に丹波篠山のために活動をされており、地域の方にも愛されているナイスガイでした。)

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多くの日本の地方と同様、人口減少・少子高齢化を抱える丹波篠山市はこのままいくと2040年には人口が大幅に減ってしまう危機感から定住人口・交流人口の増加を目指す必要があり、こういった古い街並みと自然を活かした魅力的な街づくりを行っているとのことでした。観光面での課題として都心部からのアクセスがしやすい分、観光客が、宿泊せずに日帰りで帰ってしまうという事実があり、集落にある古民家をリノベーションしたお洒落なホテルなどを創る事で滞在期間を増やす取り組みをしているとのことでした。

その後、元丹波篠山市の副市長で現在は「一般社団法人ノオト」にて、「なつかしくて、あたらしい、日本の暮らしをつくる。」という想いのもと、歴史的建築物・文化を次世代に継承するための活動をされている金野幸雄さんをゲストにお招きし、地方の発展における重要な考え方をご自身の経験をもとにお話をいただきました。

事業構想の観点から2つ学びがありました。1つは都会と地方のビジネスの正解は違うという事。「グロースを前提にした規模の拡大を追い求めるものではなく、地域に貢献し持続的に根差していくべきかがビジネスの目標になる。マーケティングにおいても、今現在の状態からマーケティングをちゃんとやると結果的に『やらない方が良い』という結論になってしまう。これまでの経験からプロダクトアウト型の方が地方の事業創造には向いている。力に研ぎ澄まされたコンテンツが1つ創るができれば、自然に良い人や事業が集まってくる循環ができる。篠山の場合、丸山集落から始まって、徐々に広がっていった。地元の人も最初は半信半疑だが、成功事例が作れていくとすごく協力的になってくれる。都会のコンサルティング会社や広告会社にいろいろアドバイスを受けるがどれもピンとこない。都会のビジネスの理論の型ではない新しい事業の型が必要なのではないか?」

もう一つは「文化」についてのお話。「国も地域も含めて、文化を保護することばかりではなく文化を新たに創造していくという考え方も必要。我々は先代が築き上げた文化遺産を使い回しているだけでは駄目。過去の文化を活かしつつ創造することが未来の文化につながるという意識を我々ももって取り組んでいくべき。新しいことは反対勢力によってつぶされやすい傾向があるがそれでやめていたら新しい文化は創造できない そしてお金で測れる価値だけではない、文化という希少性のある価値がマーケットに認められるような社会になっていくともっと取り組む人も増えるのではないだろうか」

経験に基づく、とても含蓄のある言葉を噛みしめながら1日目の夜は更けていきました。

まとめ

金野さんのお話を聞いて地域が都市部と同じ事業づくり、地域づくり、マーケティングをしていても上手くいかないというお話はとても考えさせられました。すなわちビジネスの目標をどう定義するのか?事業価値をどう定義するのか?で事業構想の起点は大きく変わってくるという事。その定義は、都市部でマジョリティに捉えられているものではない、柔軟性な定義が必要だと解釈しました。一方で視察をした丹波篠山の古民家や街並みを利用した様々な事業は、丹波篠山の場所や文化の魅力にプラスして、都市部や海外のエッセンスもふんだんに取り込まれていたことが魅力でもあったため、地域の価値を大切にしつつも外部の新しい文化や事業は積極的に取り込んでいく事が必要と感じました。


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