今日の帰りの話
なんやかんや友人宅で話し尽くしてしまって、帰る時間が思いっきり遅くなってしまった。終電というほど遅くはないけど、最終バスが無いぐらいには遅い時間だったので、最寄り駅についてから2kmぐらいを歩かないといけなくなってしまった。
まあとはいえ歩いて20〜30分もすれば普通だったら行ける距離なんだけど、今日はあいにく足を怪我していて、足に体重をかけると痛くて良くないので、歩きかたはおぼつかないし、ゆっくり歩かざるを得ない。40分以上はかかるもしれないなと思って、とりあえず駅前のマックでナゲットを買って食べながら歩き始めた。当たり前だけど、ちょっと駅から離れた頃にはもう食べ終わっていた。
線路脇の道をゆっくりトボトボ歩く。時間帯もあって、道には人通りはないし、とても静かだ。なんか蒸し暑いし、夜空は曇っていてなんにも見えないしで、快適な夜の散歩にはならなかった。街灯はそこそこあるので、深夜だからといって夜道が怖いとかそういうのはない。Spotifyを開いて、ゲームのbgmのサントラを聞きながら帰ろうとイヤホンを取り出した。静寂に音楽が響く。のんびり歩く口実ができた。
ふと線路側を見た。駅の反対側にはちょっとした住宅地が広がっていて、その中の進行方向ちょっと先の方に2階建てのアパートがあった。なんてことない普通のアパートで、白壁で、1階と2階にそれぞれ5部屋ぐらいずつあって、外付けの階段で2階に行ける造りになっている。なんでそこに注意が行ったかというと、そのアパートの2階の壁をスポットライトで照らされたような光が動いていたからだ。見ると2人ぐらいの人が、2階の右から2番目のドアの前に立っていて、アパートの壁を懐中電灯で照らしていた。
その人達は警察官だった。警察官の2人はドアの方をじっと見ていて、何かしきりに話していそうな感じがした。もっとも、僕は曲を聞いてたので彼らの話し声は全く聞こえなかった。彼らはそのドアの前で立ち止まったり、2階の他のドアの前に行ったりを繰り返していたが、やはり気になっているのは右から2番目のドアのようだった。
ドアの外見からはまったく分からないが、何かしらの事件の現場だったのだろうか?異臭か騒音だろうか?もしかして、中で人が死んでいるのかもしれないな?そんなことを考えながら、ゆっくり歩いていた僕はようやくアパートの真横、線路を挟んで反対に向かい合う位置にまで来た。
アパートの様子が気になりはするが、かといってじろじろと見つめ続けるだろうというのは不自然なので、目線を外そうとした。するとちょうどその時に、恐らくは最終電車だろう僕が乗ってきた次の次くらいの電車が視界を遮った。車両の轟音、車両の出す風圧を感じて、電車が過ぎ去ると、警官の一人が懐中電灯を片手に階段を降りていた。何もなくて撤収しているのか、1階の聞き込みにも回ったのか…と考えていると、突然アパートの電気が消えた。
いや、消えたというのはちょっと間違いかもしれなくて、蛍光灯(白熱だったのかな)の明るさが急にグワッと暗くなった。2階に残っていた警察の懐中電灯が照らす壁の明かりは消えていなくて、まだ警官がそこにいるのはもちろんわかった。天井の方を照らしたり、壁の方を照らしたりしていた。階段を降りていた警官の方は、この明かりの消灯には気づいていなさそうで、そのまま1階に着いていた。
でこのとき気づいたんだけど、このアパートのそれぞれの部屋と廊下との間には窓が無かったんだ。消灯状態になっても部屋から明かりが見えているわけではなくて、ただ暗くなってしまっている。窓がないということは、外側から住人の様子が視認できないのだ。中に人がいるのか、人がいないのかわからない。もちろん時間も遅かったので、住人はただ就寝しているのかもしれない。
でもなんか異様な感じが、なんとなくする。消えかかった廊下の明かりはなぜかなかなか復旧しなかった。どうやら1階に降りた方の警察官も気づいたらしく、降りてきた階段を登っていった。懐中電灯がこちらに向いて、ちょっと眩しくもあったが、対照的にアパートが暗すぎた。
ここで、急に今まで聞いていたbgmが止まった。虫の鳴き声がイヤホン越しに聞こえてきた。あんまりタイミングが絶妙だったから、普通にけっこうびっくりして、足を止めてスマホを見たら、なぜか全くわからないけどSpotifyのアプリが落ちていた。Spotifyを開き直して曲を再生して、ふっとアパートの方を見たら、その隙に電気が直って点灯していたようだった。
でなんと、警官がいなくなっていた。懐中電灯で照らす明かりが消えてたので、もとのぼんやり外壁が照らされた状態のアパート、つまり元通り部屋のドアと白い壁だけが変化もなくそこにあった。Spotifyを再生し直すのにかかった時間はたぶん30秒とかそれぐらいなので、充分アパートの2階から撤収しうる時間ではあった。警官たちは要件がすんで帰ったのか、いったん1階の様子を見るために降りたのかわからない(そういえば書いてなかったけど線路が盛り土みたいになってるので1階部分が微妙にこちら側から見えなくなっていた)が、それでも「警官が神隠しにあった!」と一瞬本気で思えてめちゃくちゃびっくりした。まあ足のせいで走れないので焦れないが。やけに右から2番目のドアが気になって、5秒ぐらいじっと見ていたけど、特に何もなかった。いや一瞬だけドアの真ん中というか、多分のぞき穴っぽいところが光った気がしたけど多分気のせい。
それからは特に何もなくて、僕もアパートの横を通り過ぎて、ただのいつもの道をゆっくり帰ってそのまま家に着いた。こういうホラーっぽい話に展開できそうなエピソードをなんか初めて体験したので、noteにでもして消化しようとして、こんな感じで書いてみた。特にそれ以上でもそれ以下でもないんだけど、まあ記述というか随筆っぽいやつの練習みたいな感じなので。
p.s. 書き終えてからなんとなく気になってあとでGoogle Mapで調べてみたんだけど、確かにその2階建ての白壁アパートっぽいのが一軒だけ線路沿いにあって、見た感じ白壁で窓が無いからこれだろうなってのがあった。
でも、線路とそのアパートの間にちっちゃい商社みたいなビルがあって、アパート2階の右から2番目のドアは線路の反対側からは絶対見えないようになってたんだよ!!
じゃああれはマジでなんだったんだ…
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